関係者やファンの間で批判があるマルシュロレーヌに「賞なし」の真相。歴史的偉業は無視されたわけではない (4ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 JRA賞が発表されて以降、各SNSやインターネットメディアなどを中心に批判の声が上がっているが、そうした意見に対しても十分に逡巡しての「"ノー"でした」と、彼は続ける。

「もちろん、賞を授与することでマルシュロレーヌの偉業が広く周知されるべき、という考えもありましたし、その考えも正しいと思います。でも個人的には、表彰し、評価を引き上げるのはどうなのかな、と。やはり、自分が判断基準とした過去の受賞馬の例とは少し違うのではないか、と考えました。最終的に"ノー"と決断したことに対する批判は甘んじて受けます」

 そうは言っても、「特別賞に選定しなかったことが、マルシュロレーヌの偉業を無視していることではない」と彼は再度強調する。

「何度も強く言いたいのは、BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌはすごい。超すごいんです。自分も自らの記事で触れましたし、育成や生産者などの関係者のみなさんから、そういった話を直接かつ継続的に取材している数少ない人間だという自負はあります。

 それだけに、報道の影響もありますが、各部門賞、特別賞を受賞しなかったことが"評価していない"と曲解されてしまっているのは、選定委員としてではなく、イチ記者としてちょっと悲しい部分があります。

 批判はごもっともですが、それ以上にこうして賛成しなかった理由をつらつら挙げていますと、マルシュロレーヌが成し遂げたBCディスタフ優勝を貶めている気になって、胸が締めつけられる感じになります。今はとにかく、(2月末に開催される)サウジカップデーでも頑張ってくれ! と願うばかりです」

 今回のことについては、賛否意見が分かれるところだろう。しかし、十分に検討し、批判を承知のうえで下した選定委員の決断にも敬意を表したい。

 いずれにせよ、マルシュロレーヌが歴史的な偉業を成し遂げたこと。その事実が変わることはない。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る