マイルCSで懐かしむ。競馬界の常識を覆した最強のマイル王タイキシャトル

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 日本の競馬は、2000m~2400mの中距離戦に重きが置かれている。「最も価値が高い」と言われるGIレースがあるのもこの距離だ。結果、この距離のGIを制した馬から、数多くの名馬、名牝が生まれている。

 それに比べると、他の路線、つまりマイル以下の短距離戦や、3000m以上の長距離戦は、同じGIでもワンランク下に見られる傾向にある。

 この、いわば日本競馬の固定観念を、圧倒的なパフォーマンスによって打ち破った馬がいる。「マイル王」のタイキシャトルだ。

 1997年にデビューして、翌1998年に引退するまで、その戦績は13戦11勝。うちGI5勝で、その中にはフランスGIがひとつ含まれている。

 特筆すべきは、マイルの距離に関しては、芝、ダート含めて7戦7勝。日本でも、海外でも、一度も負けたことがない。正真正銘の「マイル王」なのである。

1997年、1998年とマイルCS連覇を果たしたタイキシャトル1997年、1998年とマイルCS連覇を果たしたタイキシャトル タイキシャトルのGI5勝のうち、GIマイルCS(京都・芝1600m)の連覇がある。この2つのマイルGIを、タイキシャトルのベストパフォーマンスという声は大きい。

 1997年のマイルCSは、タイキシャトルがまだ"怪物級"の本性を現す前だった。そこまで6戦5勝、2着1回と完璧に近い戦績で、前々走でダート重賞を、前走で芝1400m戦の重賞を勝っていたが、GIで戦えるかどうかは未知数だった。しかも、この時は3歳だった(※当時の年齢表記は4歳。以下同)。

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