マイルCSで懐かしむ。競馬界の常識を覆した最強のマイル王タイキシャトル (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 だが、そんな評価など歯牙にもかけず、タイキシャトルの快進撃は続く。

 翌1998年は、GI安田記念(東京・芝1600m)を制覇。春のマイル王の称号も手にした。さらに、夏にはフランスへ遠征し、欧州の最強マイラーを相手にGIジャック・ル・マロワ賞(フランス・芝1600m)まで制した。

 そして、帰国後に選んだレースが、連覇のかかるマイルCS。この時も、タイキシャトルは前年同様、先行策でレースを進めた。直線に入り、追い出しのタイミングをじっくり待って仕掛けると、後続を一気に突き放していった。

 その圧巻のレースぶりに、実況アナウンサーも「これが世界の実力! これが世界の実力だ!」と絶叫。またしても、先行しながら上がり最速をマークして、2着にも5馬身差という大差をつけた。これは、マイルCSのレース史上、最大の着差である(1987年、ニッポーテイオーがつけた着差と同一)。

 ここまでの実績とパフォーマンスを見せつけられては、もはや「中距離こそ、王道」などとは言っていられない。タイキシャトルは、マイル以下のレースにしか出走歴のない"短距離馬"として、日本競馬史上、初の年度代表馬に選出されたのである。

 今年もまもなくマイルCSが行なわれる。

 先行して、抜け出し、突き放す――タイキシャトルのような"名馬"が登場するのか、注目である。

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