【スプリングS】この相手ならマウントロブソンに妙味あり
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
今週は、祝日の月曜日を含めて3日間競馬が開催されます。3日間それぞれの日に重賞が行なわれ、春のGIシリーズに向けてどのレースも見逃せません。その中でも、ここでは皐月賞トライアルのスプリングS(3月20日/中山・芝1800m)を取り上げたいと思います。
牡馬クラシック第1弾となる皐月賞(4月17日/芝2000m)は、東京競馬場で開催される日本ダービー(芝2400m)や、京都競馬場の外回りコースで行なわれる菊花賞(芝3000m)に比べて、小回りで直線が短いうえ、ゴール前に急坂のある中山競馬場が舞台となります。とてもトリッキーなコースで、「三冠レースの中でも、最も"鬼門"となるレース」とも言われています。要するに、ただ強いだけでは勝てない、ということです。
ゆえに、皐月賞を狙う、もしくは三冠まで意識する馬を管理する関係者なら、本番前に「このコースは経験させておきたい」と考えます。そのため、特に皐月賞と同じ距離、同じコースで行なわれるトライアル戦の弥生賞には、本番までの間隔が空いていて、ゆったりとしたローテーションを組める関係で、より多くの有力馬が集結します。僕が現役の頃も、同じGII戦であっても、スプリングSより弥生賞のほうが、メンバーがそろっていた印象があります。
そして今年も、弥生賞(3月6日)組のレベルは高く、とりわけ上位に入線した馬たちはかなり強いと思いました。それほど、心を揺さぶられる、衝撃的なレースでしたね。近年では、スプリングS組のほうが皐月賞で結果を出しているようですが、今年に関しては間違いなく弥生賞組が優勢でしょう。おそらく本番でも、弥生賞組の上位3頭、マカヒキ(牡3歳)、リオンディーズ(牡3歳)、エアスピネル(牡3歳)と、きさらぎ賞(2月7日/京都・芝1800m)から直行するサトノダイヤモンド(牡3歳)の争いになるのではないでしょうか。
とはいえ、スプリングS組にも、力のある馬はいます。昨夏の新潟2歳S(2015年8月30日/新潟・芝1600m)を圧勝したロードクエスト(牡3歳)です。同馬は唯一、前述した有力4頭に肉薄する可能性を残していると思います。
新潟2歳Sは、かつての1200m、1400m戦からマイル戦に変更された2002年以降、ハープスターやセイウンワンダー、エフティマイア、マイネルレコルトといった勝ち馬、さらにイスラボニータ、ジャスタウェイら2着馬から、のちのGI馬やGIで活躍する馬が次々に登場。出世レースに変貌しました。
ただ一方で、ショウナンタキオン、ゴールドアグリ、モンストールなど、強い競馬でここを制して、「これはクラシック候補か」と評判になりながら、その後は期待ほどの成績を残せなかった馬たちもいます。これらは結局、このときに最大のパフォーマンスを発揮し、2歳夏の時点での完成度の差で勝ったと言えます。いわゆる「早熟」だったということでしょう。
はたして、ロードクエストはどっちなのか。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。