【競馬】波乱の函館スプリントS。狙いは、力秘める「高齢馬」
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
6月もはや3週目、中央競馬はいよいよ北海道シリーズが開幕します。
競走馬生産の基幹である北海道での開催は、やはり関係者にとっても特別なものです。また、美浦(茨城県)や栗東(滋賀県)のトレセンで仕上げて直前に入厩してくる馬も稀(まれ)にいますが、北海道開催の場合、基本的にはトレセンから離れて、競馬場で仕上げる出張滞在競馬が主流。昔ながらの、独特な雰囲気に包まれます。
そんな北海道シリーズの開幕週の重賞は、函館スプリントS(6月21日/函館・芝1200m)です。特筆すべきは、ここ数年、実績上位で断然の1番人気の馬がことごとく敗れていること。昨年は、不利があったとはいえ、ストレイトガール(牝6歳)が11着と大敗し、一昨年はドリームバレンチノ(牡8歳)が7着に沈みました。さらにその前年は、のちにスプリントGIを総なめにした、あのロードカナロアでさえ、2着に敗れました。春のGI戦線で目いっぱいの競馬をしたあとだけに、仕方がないところもあるでしょう。が、馬券的な妙味は増しますね。
さて、今年の1番人気は、どうでしょうか。
想定されるのは、マイル以下の重賞で4勝を挙げて、ここでは実績的に最上位と言えるコパノリチャード(牡5歳)。前述した近年の傾向や、トップハンデとなる斤量58kgというのは気になるところですが、昨年の高松宮記念(2014年3月30日/中京・芝1200m)の覇者で、今年も同レース(3月29日)では外枠(8枠17番)発走ながら5着と地力を見せました。
加えて、鞍上は武豊騎手。6月14日に行なわれたエプソムC(東京・芝1800m)でも、気の強いエイシンヒカリ(牡4歳)を見事な手綱さばきで勝利に導いたばかり。そんな"名手"が騎乗するのですから、無視することはできませんね。
コパノリチャードに比べるとかなり実績は劣りますが、セイコーライコウ(牡8歳)も侮れません。
8歳という高齢馬とあって評価は低そうですが、昨夏のアイビスSD(2014年8月3日/新潟・芝1000m)の勝ち方が本当に鮮やかでした。芝1000mの直線競馬では、内枠が不利と言われますが、2枠2番でスタートしたセイコーライコウは、内で脚を溜めて、内から抜け出して楽勝したのです。直線競馬の重賞において、あの競馬ができるというのは、能力が抜けている証です。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。