【競馬】激戦のオークス、東京合うクイーンズリングが不気味
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
東京競馬場におけるGI5週連続開催もはや3戦目。3歳牝馬の頂上決戦となるオークスが5月24日に開催されます。
舞台となるのは、3歳牝馬にとってはタフな、東京・芝2400m。マイル(1600m)戦の桜花賞(4月12日/阪神)から一気に800mも距離が延びて、ほとんどの馬にとって"未知の領域"となるため、ジョッキーの心理的にも非常に難しい一戦です。繊細な牝馬ですから、牡馬と比べて気を使うところも多くなるんですよ。
まず注目は、ルージュバック(牝3歳)です。桜花賞では、単勝1.6倍という圧倒的な支持を受けながら、よもやの惨敗(9着)。見せ場さえ、作ることができませんでした。
僕が思うに、今年の桜花賞は普通では考えられないレースでした。1000m通過が1分2秒5、1200m時点でも1分13秒8と、極端なスローペースとなりました。当然、後半の流れは速くなって、逃げた勝ち馬(レッツゴードンキ)の上がり3ハロン(600m)が33秒5。これだけ速いタイムを刻まれては、とても後ろの馬は追いつけません。正直、こんな決着は本当に稀(まれ)というか、桜花賞史上でも思い当たるレースが浮かびません。それほど特殊なレースで、能力を出し切れずに終わった馬が多かったのも頷(うなず)けます。
ルージュバックも、その中の一頭と言えるでしょう。マイル適性、関西圏までの長距離輸送、最終調教の内容......と、いろいろと敗因は挙げられていますが、とにもかくにも、極端な展開だったことが、敗れた最大の理由だと思います。
しかし今回は、そんな"紛(まぎ)れ"さえも許さない、地力が求められるコースです。ルージュバックは昨秋、のちの重賞勝ち馬となる牡馬のベルーフ(牡3歳)、ミュゼエイリアン(牡3歳)らを、百日草特別(2014年11月9日)で難なく撃破。東京・芝2000mの舞台で、あれだけのパフォーマンスを見せられることを思えば、オークスこそ、ルージュバックの本領を発揮できる舞台と言えるのではないでしょうか。
唯一の懸念は、放牧先から美浦トレセン(茨城県)に戻ってきたのが、本番から12日前の5月12日だったこと。GIを使う馬としては、レースまでの、美浦トレセンでの調整期間がこれほど短いのは異例なことです。その点はやや気になるところですが、放牧先の育成牧場である程度仕上げて、トレセンでは調整程度でレースに挑むのは、今どきの競馬のスタンダードになりつつあります。そんなに心配しなくてもいいでしょう。3連勝を飾ったときのような、豪快な決め手を見せてほしいですね。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。