【競馬】戦国模様の皐月賞。「唯一のGI馬」に旨味あり
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
4月20日、牡馬クラシック第1弾の皐月賞(中山・芝2000m)が開催されます。桜花賞では「世代最強」と言われるハープスター(牝3歳)に、実績上位のレッドリヴェール(牝3歳)という抜けた存在がいましたが、一転、皐月賞は有力馬が五指に余る戦国ムード。どんな決着になるのか、楽しみなレースです。
まず注目は、皐月賞と同じ舞台で行なわれたトライアルの弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)組です。
2着ワンアンドオンリー(牡3歳)は、勝ち馬トゥザワールド(牡3歳)を際どく追い詰めて(ハナ差)、ゴールを過ぎたところでは完全にかわしていました。見た目にも非常に強い競馬で、こういったレースをしたあとは、期待度も高まって意外と人気になるものです。勝ったトゥザワールドよりも「上」と考える人も少なくないでしょうね。確かに潜在能力的には、五分か、もしかするとそれ以上かもしれません。
ただし、同馬は少し乗り難しい面がありそう。立ち回りが課題で、本質的には小回りの中山コースは不向き。皐月賞よりも、"大箱"の東京競馬場で行なわれる日本ダービー(6月1日/芝2400m)のほうが、能力を存分に発揮できるのではないでしょうか。
一方、トゥザワールドは、仕掛けると即反応し、止めるとすぐに減速できます。折り合いもスムーズで、とても器用に立ち回れる馬です。弥生賞ではワンアンドオンリーに猛追されたとはいえ、大外を自ら動いていって、しかも早めに抜け出す"横綱競馬"を見せてのもの。どちらかというと、追い込みのワンアンドオンリーに向いた展開でありながら、勝ち切りました。着差以上に強い競馬だったと思います。
鞍上は、川田将雅騎手。桜花賞ではハープスターの手綱をとって、最後方待機から直線で全馬を差し切るという、驚きの騎乗を見せました。単勝1.2倍という圧倒的な支持を得た馬に乗って、あれだけじっくりと構えられるジョッキーは、そうはいません。
騎手というのは、強い馬に跨(またが)ることで成長する場合が多いです。しかし、そうした機会は、騎手の誰もが得られるわけではありません。関係者からの期待に応えて、信頼を得られた者だけにめぐってくるものです。つまり、すべては本人が努力した成果です。まさに川田騎手は、そうした努力の結果、成長。大一番でのプレッシャーを、力に変えられるトップアスリートになりました。今回の皐月賞ではどんな騎乗を見せてくれるのか、その手綱さばきからも目が離せませんね。
この他、前哨戦のスプリングS(3月23日/中山・芝1800m)を制したロサギガンティア(牡3歳)も気になる存在です。特に前走、初の右回りで結果を出せたことは大きいですね。皐月賞に向けて、不安材料がなくなり、期待が膨らみます。
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プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。