【競馬】ゴールドシップの「素顔」に見えた、有馬記念での復活劇 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 山根英一/アフロ●撮影

 ゴールドシップの生まれ故郷である出口牧場(北海道日高町)。同牧場の出口俊一氏は、同馬の幼少期について、その印象をこう語る。

「とにかく体が大きいというイメージで、性格はおとなしかったですね。ほんの少し我の強いところはありましたが、特に手を焼くことはありませんでした。母のポイントフラッグは神経質なところが多少ありましたが、ゴールドシップはそういった面を見せませんでしたし、父ステイゴールドの特徴である気の強さもそれほど感じませんでしたね」

 レース前や調教の際に見せる荒々しい姿とは、明らかに違う印象だ。

 同様のイメージをゴールドシップに抱いている人は、他にもいた。同馬の育成(※デビュー前に基礎的なトレーニングを積む過程)や、休養時の管理を行なってきた吉澤ステーブル本場(北海道浦河町)の場長・広島剛氏だ。

「(ゴールドシップは)おとなしい、という印象が強いです。ゴネたり、人の指示に逆らったりということはほとんどありません。デビュー前の様子もわりと優等生で、順調にトレーニングを消化したため、かえって目立たない存在だったほどです。今も北海道に帰ってきて休養するときは、静かで利口ですね」

 しかしレースが近くなり、より本格的なトレーニングを積むために吉澤ステーブルWEST(滋賀県甲賀市)へと移ると、毎回ゴールドシップの様子は大きく変わるという。「急に立ち上がったり、逆に止まって動かなくなったりする」ことが多く、競馬場で見る荒々しい姿に近づくようだ。

「ゴールドシップは、すごく頭の良い馬なのかもしれません。北海道の本場にいるときはレースが近くないことをわかっていておとなしい。しかし滋賀のWESTに行くと、レースが近いことを察知し戦闘モードになる。それで振る舞いが変わってくるのだと思います」(広島氏)

 吉澤ステーブルの本場とWESTで見せる、ふたつのゴールドシップ像。その変化に「頭の良さ」を感じるからこそ、広島氏は前走ジャパンカップでの大敗からも、こんなことを感じていた。

「ジャパンカップは、ゴールドシップが自分で(レースを)諦めてしまったような気がするんです。直線に入って一瞬伸びかけたんですけど、その瞬間に『今日は無理かな......』と感じてしまったような。頭が良い馬だからこそ、それが本当でも不思議はないように思えるんです」

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