【競馬】繁殖牝馬シルバーレーンが新興牧場にもたらした「奇跡」 (3ページ目)
「あの勝利にはびっくりしましたね。ピンクカメオは3戦目で、NHKマイルカップと同じ東京競馬場の500万下特別(芝1400m)を勝っていたので、『好走してくれるかも』とは思っていましたが、まさか勝つとは……。当日、雨が降って力のいる馬場状態になったことが、彼女に味方したのでしょう。ダートでも通用する父のパワーが生きました」
スウィーニィ氏が父フレンチデピュティに感じていた一抹の不安は、幸運にもピンクカメオがGIを手にする大きな力になったのである。「彼女の勝利がパカパカファームの注目度を上げてくれたことは、言うまでもありません」とスウィーニィ氏は付け加えた。
ピンクカメオはその後、勝利こそ挙げられなかったものの、オークスで5着に入るなど、重賞戦線で奮闘して競走生活を終えた。母シルバーレーンは、ピンクカメオ以降、2頭の子を生んで、うち一頭の牝馬カウアイレーン(父キングカメハメハ)は、5勝を挙げる活躍。オープンのターコイズSを制し、重賞のクイーンSでは3着と好走した。
誕生したばかりの牧場に大きなプレゼントをもたらしたシルバーレーン。GI馬を生み出した偉大な母の記憶は、パカパカファームの地で残り続けるに違いない。
パカパカファームの原動力となったのは、紛れもなく、プリンセスリーマ(メイショウドトウの母)やシルバーレーンなどの輸入繁殖牝馬だろう。その繁殖牝馬を選ぶ過程にこそ、スウィーニィ氏独自の理論がある。
次回は、スウィーニィ氏の繁殖牝馬選びの哲学に迫る。
(つづく) ハリー・スウィーニィ
1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
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