【競馬】オルフェーヴルでも涙。凱旋門賞制覇には何が必要なのか

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

馬群から一気に抜け出したオルフェーヴルがついに日本競馬界の夢を果たすと思ったが......。馬群から一気に抜け出したオルフェーヴルがついに日本競馬界の夢を果たすと思ったが......。 ゴール前、残り300m。他の17頭とは明らかに次元の違う、鮮やかな末脚で抜け出してきたオルフェーヴル(牡4歳)に、日本中の、いや世界中の誰もが、日本調教馬による初の凱旋門賞制覇を疑わなかったはずだ。

 勝つときというのは、こんなに圧倒的であっさりとしたものなのだろうか。不思議な戸惑いとともに、長く待ち望んだ瞬間を間際にした刹那(せつな)、栗毛色の4歳馬の切れ味が急に鈍り、それと同時に、一旦は交わしたはずのソレミア(牝4歳/フランス)がファイトバック。一度はつかんだ栄光が、ゴールの瞬間、その手からスルリと逃げていった。まるで、つかむ力が強すぎたあまりに掌(てのひら)から弾かれたかのように......。

「あれはオルフェーヴルが勝っていたレースだった」

 レースの後、各国のメディアや厩舎関係者から声をかけられた。

「あの脚は紛れもない、歴史的名馬の脚だった。結果が伴わなかったのは先頭に立つのが早すぎたからだ。でもこれは、バッドラックとしか言えない」(イギリス人調教師)

 レース単体で見れば、手綱を取ったスミヨンの早仕掛けとも見える。関係者の中にもそれを公然と指摘する声があったし、スミヨン本人も「先頭に立ったことで馬が目標を見失ってしまった」と、結果論として否定はしない。

 しかし、この状況に至る経緯には、さまざまな伏線が折り重なっていた。

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