松山英樹、きっかけをつかむ。全米OPで「王者のゴルフ」に変身か (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 そして松山は、同組のパトリック・カントレー(アメリカ)が、最終日に「64」をマークして優勝したことについては、「トップに立ってからも淡々とやっていた。(自分も)ああいうプレーができないと......」と語った。

 その松山にとって、ペブルビーチGLで開催される全米オープンは初。大会前週には2ラウンドを消化したという情報もあるが、おそらく松山は、メモリアルトーナメントで勝つために走る"レール"を見つけ出したと思う。それは、技術面だけでなく、メンタル面でのゲームの運び方だ。

 松山には、悩みや迷い、ショットの不安などを、どうしても自分の中に閉じ込めてしまう傾向がある。それが、いい方向にいくこともあるけれど、むしろ今は、それによって粘りの限界を小さくしてしまいがちだ。

 そうしたことが、メモリアルトーナメントでの出来事をきっかけにして好転したと思うのだ。その試みが成功すれば、つまり見つけ出した"レール"にうまく乗ることができれば、松山のゴルフは"王者のゴルフ"に変身する。

 手強い相手たちが立ちはだかる今年の全米オープンは、4日間、見逃すことのできない72ホールとなるに違いない。

 そもそも全米オープンというのは、イーブンパーを分水嶺にして優勝争いが繰り広げられてきた。3日間、54ホールまで淡々とゲームが進んでいって、最終日の前半9ホールを終えて、いよいよクライマックスに突入。その時点から、優勝争いが熾烈になる。

 そこから、強靭な精神力と技(ワザ)の戦いが始まる。ゆえに、誰もが「本当の戦いは、そこから始まる」と口にした。そうして、スコアボードに掲示されたアンダーパーを示す赤字がどんどん消えていくなか、赤字のまま生き残った選手が勝利を収める、というのが常だった。

 その"常識"を覆したのが、ウッズだった。米国屈指のリンクスコース、ペブルビーチGLが舞台となった2000年の全米オープン。ウッズは、2位に15打差をつける通算12アンダーであっさりと優勝してしまったのだ。

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