人生のどん底を味わった「元アマ王者」パトリック・カントレーの復活劇 (3ページ目)

  • text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN
  • photo by PGA TOUR

 カントレーを襲った"悲劇"は、自らの負傷だけではなかった。昨年2月、高校時代からの親友で、自身のキャディーも務めてくれていたクリス・ロスが、カリフォルニア州の路上でひき逃げにあって命を落とした。事故はまさにカントレーの目の前で起こり、ロスはカントレーの腕の中で息を引き取ったという。

「(当時)僕は人生の最下点にいたと思う。大切なものは、もう何もなかった。何をやっても、何を見ても、悲しくなった。幸せな気持ちになんて、一切なれなかった。たったひとつの出来事が、こんなにも人生を変えてしまうとは、思いも寄らなかった」

 それでも、カントレーが失わなかったものが、ひとつだけある。

「プレーへの情熱。(事故から)数カ月経って、それだけは(自分の中に)まだ残っていることに気づいた。ゴルフは一番大切なものではないけれど、でも今も『いいプレーをしたい』と、そう思う気持ちはずっと変わっていない」

 ようやくプレーできるようになった今季、カントレーには公傷制度によって「10試合」の参戦が認められている。

 そして、今大会で2位になって68万4000ドル(約7800万円)を獲得。これで、公傷制度「10試合」におけるノルマだった62万4000ドルを突破し、残りのシーズンはシード選手として出場制限なしに戦うことができるようになった。2位とはいえ、その結果は非常に価値のあるものだったのだ。

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