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メッシを指導者歴2年でなぜ掌握できたのか アルゼンチンをW杯優勝に導いた「捨て駒」スカローニ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【「集団のなかでどうすれば役に立てるか...」】

「Peon de Ajedrez」

 スカローニには、スペイン語で「ポーン」という称号が与えられていた。チェスの駒で「歩兵」を意味する。転じて「捨て駒」とも揶揄される。

 その「ポーン」の精神がアルゼンチン代表監督としての成功につながっているのかもしれない。彼はまさに一兵卒として、集団の中に潜ることができた。そこで利己的な振る舞いをしない。それは監督になっても変わらなかった。

 スカローニ本人はラ・コルーニャ版『ラ・オピニオン』で現役時代を振り返り、監督マネジメントにも通じる話をしている。

「自分はその(有力選手とポジション争いする)レベルには至っていなかったと思う。だからこそ、集団のなかでどうすれば役に立てるのかを、いつだって真剣に考えていた。そうした先が見えない状況では、当然ながら迷いが出る。でも、そこで諦めずに戦い続けられるか。"信じ続けて戦う"という姿勢は、監督として率いているアルゼンチン代表の姿にもつながっているかもしれない」

 驕りなく、チームのために献身する。彼は監督というリーダーになっても、それをやり続けた。

「ワールドカップはひとりの人間で勝ち取れるものではありません」

 スカローニは毅然として言うが、それは伝説的な活躍をしたリオネル・メッシのことではなく、己に対する戒めのようにも聞こえた。そうした無我の姿勢を指揮官が貫くのは決して簡単ではない。やはり、リーダーなりのエゴは出てくるし、それによって集団を統率する部分もあるからだ。

 しかし、スカローニは実体を見せないことで、アルゼンチン代表を束ねていた。ゴーストという表現がいき過ぎているなら、むしろ「影」とすべきか。英雄メッシに最高権力を移譲したように見せることによって、"黒幕"になれたのではないか。もちろんそれは邪悪なものではない。人生を通じた真摯な姿勢が伝わることでチームをひとつにした、という仮説は成り立たないか。

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