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偽9番システムでジョアン・ネベスが得点量産 完成されたトータルフットボールの姿 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【大胆かつ広範囲にポジションが動くPSG】

 PSGの基本システムは4-3-3。MFの中央はヴィティーニャ、ビルドアップの軸となる中盤の底にいるプレーメーカーだが、運動量は非常に豊富でフィールドのいたるところに顔を出す。インサイドハーフは左がファビアン・ルイス、右にジョアン・ネベスだが、このふたりも稼働範囲がかなり広い。

 守備はハイプレス基調、MF3人はマンツーマンでつく。3人とも高い技術と戦術眼の持ち主だが守備力も高い。この3人のクオリティがPSGのスタイルを支えている。

 デジレ・ドゥエ、ウスマン・デンベレ、ブラッドリー・バルコラ、フビチャ・クバラツヘリアのFW4人のうち3人が先発する。いずれも突破力、得点力に優れた強力なフロントライン。カウンターアタックの鋭さは大きな武器だ。

 さらに独特の特徴として流動性があげられる。

 昨季後半から定着したデンベレの「偽9番」はよく知られているが、それに伴うポジションの流動性が非常に大きい。偽9番は流動性の引き金になる攻撃方法とはいえ、PSGほど大胆かつ広範囲にポジションが動くチームはかなり珍しい。

 偽9番と流動性の組み合わせは、古くは1940年代のリーベル・プレート、1950年代のハンガリー代表があるが、世界的に大きな影響をもたらしたのが1974年W杯でのオランダ代表である。センターフォワード(CF)のヨハン・クライフの変幻自在のポジショニングに伴い、まるでポジションがないようなチーム全体の流動性が衝撃的だった。プレッシングの源流でもあり、のちのバルセロナ、マンチェスター・シティなど、多くのチームのモデルと言っていいだろう。

 そのなかでも、PSGはかつてのオランダに最も近いかもしれない。

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