なぜ遠藤航はリバプールで敬意を集めているのか 実は欧州でも希少な「縁の下の力持ち」 (2ページ目)
【「手放してはいけない選手」か】
横浜F・マリノス戦でも、遠藤が途中出場してからチームは逆転した。もちろん、それはあくまで試合の流れだろう。先発していたファン・ダイクはサイドチェンジのパスにしても、カウンターでの相手との1対1を完全に止めきってしまうディフェンスにしても、どれもワールドクラスだった。見逃せないのは、遠藤が代わりに入ったことでチーム力が下がらなかった点だ。
逆にチームは勢いを増した。カウンターからモハメド・サラーのパスをフロリアン・ヴィルツが決めて同点に。ジェレミー・フリンポンのクロスを18歳トレイ・ニョニが逆転弾を決める。さらに16歳、リオ・ングモハが単騎で持ち込んで、とどめの3点目を豪快に突き刺している。
そのたびに得点者たちを祝福するキャプテンの遠藤の姿は頼もしかった。
遠藤のような"縁の下の力持ち"は、プロサッカー界では意外にもなかなか手に入らない。レアル・マドリードは2013-2014シーズンから2023-2024シーズンの10シーズンで、なんと6度もCLで優勝しているが、ナチョという史上最高級の縁の下の力持ちがいた。
ナチョは14シーズン在籍したが、シーズンを通してひとつの定位置を確保し、先発で出続けたことはなかった。しかし左右のサイドバック、左右のセンターバックを必要に応じて担当できた。そのユーティリティ性は出色で、何より、メンタリティは神格化されていた。
「ナチョのような選手の姿勢を全員に見習ってほしい。日頃から、彼がどれだけ準備できているか。彼のような選手がもっといたら、もっと勝利を積み重ねられる」
CL3連覇をやってのけたジネディーヌ・ジダンはそう賛辞を送った。そして「決して手放してはいけない選手」とした。なぜなら、ナチョのような謹直にサッカーと向き合える存在がいることで、すぐに調子に乗るスター選手の鼻をへし折り、真摯に戦わせることもできたからだ。
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