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リバプールの何が特別だったのか 横浜F・マリノスの選手たちが体感したプレミアリーグ王者の力 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「失点してから、すぐに得点できなかったことは反省すべき」

 スロット監督がそう言って不満を示したように、リードを許した後、リバプールは明らかにギアを上げた。

 そして後半17分、相手のパスを自陣でカットすると、猛然としたカウンターで敵陣へ。右サイドのモハメド・サラーに渡ると、それを中に折り返し、スペースに入ったフロリアン・ヴィルツが決めた。後半23分にも交代出場のジェレミー・フリンポンが寄せの甘さを見透かし、FKのような弾道のクロスをファーに送り、18歳のトレイ・ニョニが押し込み、あっさりと逆転した。

 極めつきは、後半42分の3点目だった。

 その直前、ボールの"主人"は3度、4度と入れ替わっている。しかし、リバプールがそれを制すると、16歳のアタッカー、リオ・ングモハに出た瞬間だった。リオを含めて6人が猛然と横浜FMゴールに迫った。数的有利だけでなく、ポジション的優位、かさにかかったスピードでも圧倒し、最後は16歳がひとりで持ち込んで決めた。

 リバプールの選手たちは骨の髄まで、"自分がゴールを決める"という意識が刷り込まれていた。だからこそ、全員が猛々しく敵陣に殺到した。コンビネーションも使えたが、そもそも個人が敵を制していた。

 全員がボールプレーヤーとして90分間、やり合い、対峙し続けられるか。それは日本サッカーがいつかたどり着くべき"場所"だろう。少しでもそこへ向かう努力を怠ったら、いつまでも蜃気楼のままだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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