リバプールの何が特別だったのか 横浜F・マリノスの選手たちが体感したプレミアリーグ王者の力 (2ページ目)
【可能性を感じさせた先制のシーン】
品定めが終わると、前半15分過ぎからは完全に圧倒した。
リバプールは横浜FMのプレッシングを解除していった。ヨーロッパでは「プレッシングが通じるのは凡庸な敵だけ」とも言われるが、それでもプレッシングをかける体力トレーニングが推奨され、そうしたチームが勝ち上がっている。つまり、プレッシングやトランジションの体力や戦術はベースで、リバプールの選手は適応力があり、その強度のなかで高い技術を出せる選手を揃えているのだ。
「プレスが早く、切り替えも早く、すべてのレベルの基準が高かったです。ビルドアップも、すべての動きがつながっていて。誰がどう動くべきか、トレーニングされていることが伝わってきました」
喜田はそう説明していたが、有機的な動きは"赤い血液が流れている"ようだった。その活気が相手を凌駕した。
「前半で、カウンターを決められていたら」
横浜FM側から見れば、そんな意見もあるかもしれない。しかし、そんなジャンケンのような了見では、リバプールのような敵には一矢を報いるのが精いっぱいだろう。横浜FMのいくつかあったカウンターは、駆け引きのなかで生じた、もしくはコンディションの問題によるものだった。それもフィルジル・ファン・ダイクのディフェンスやギオルギ・ママルダシュビリのセービングで完全に封じられていた。
一方、後半10分に横浜FMが先制できたシーンは、彼らの可能性と言える。大げさに言えば、日本サッカーの希望だろう。攻守が入れ替わるなか、左サイドからボールを運んでラインを押し下げ、インサイドに入ったサイドバックがボールを受ける。一瞬、リバプールの足が止まったところを植中がラインブレイクする走りを見せ、スルーパスを角度がないところから蹴り込んだ。
〈しっかりとボールを握り直し、押し込み、スペースを作り、使い、精度の高いプレーで得点を決める〉
それは横浜FMが模索し、日本サッカーが真剣に構築すべきプレーだろう。カウンター一発に頼って、「勝った」「負けた」と騒いでいるところから脱し、サッカーで上回る瞬間を多く作れるか。なぜなら、「世界」はそれを突き詰めているからだ。
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