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FIFAスキャンダルから10年 ブラッター、プラティニ...「サッカー界のドン」たちの現在 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【ブラッター、プラティニへの無罪判決は確定】

 捜査の手はFIFA会長を17年間務めたゼップ・ブラッターと、UEFA元会長で現役時代は3度のバロンドール受賞者であるミシェル・プラティニにも伸びていた。スイスの検察は、ブラッターがFIFAの資金から200万スイスフラン(2015年のレートで約2億5000万円)をプラティニに不正に渡していたと主張した。

 彼らは金の支払いは認めたが、これは1998年から2002年までのコンサルティング業務に対する正当な報酬だったと返した。ブラッターは1998年にプラティニに自身の顧問として働くよう依頼し、年間100万スイスフランを支払うと約束したが、結局は年間30万スイスフランしか支払っていなかったので、残りを後払いにした。それがこの金額だというのだ。

 だが検察は、この主張を裏づける証言をしたふたりのFIFA職員を、ブラッターとプラティニが懐柔して偽証させたとし、詐欺、偽造、横領の罪で起訴。ブラッターとプラティニを8年間のサッカー活動の停止処分(のちに軽減)に追い込んだ。

 だが、長い調査と2度の裁判を経て、スイス裁判所は彼らの説明を信じ、2022年に両者を無罪放免にした。さらに今年3月の控訴審でも、再び無罪を言い渡した。裁判官は、犯罪行為や個人的な利益を得た証拠はなかったと結論づけた。

 今後、上告の可能性はなく、これですべてが終わったというのが大方の見方である。ブラッターとプラティニの嫌疑は晴れたと言っていいだろう。

「この10年間で経験したことは簡単ではなかったが、今こそ終わると願っている」

 判決後、ブラッターはそう述べた。ブラッターは今回の起訴を、2022年W杯開催権を確保できなかったことに対する「アメリカによる私への攻撃だと見ている」と言っている。

 現在89歳の彼は、サッカーの世界から離れ、スイスで静かな生活を送っている。唯一サッカーとつながっているのは、18年前から毎年、彼の故郷のウルリヒェン村で行なわれる「ゼップ・ブラッター・トーナメント」を主催することだけだ。これには地元のサッカーチームと引退した国際的なスター選手が参加している。

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