プレミアリーグで日本人FWは成功できないのか 開花が期待される23歳以下の本格派ストライカー4人
かつて、日本にも驚異のストライカーが存在した。
釜本邦茂である。
公称179cm。いやいや、180cmの筆者より明らかにでかい。全体的にがっちりしており、釜本に反則覚悟のタックルを仕掛けて逆に跳ね飛ばされた都並敏史(現ブリオベッカ浦安監督)は、次のように語っていた。
「まるで樫(かし)の木にブチ当たったかのようだった」
デンマークでゴールを量産している鈴木唯人 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 右45度からのシュートは強烈、かつ正確。ヘディングも無敵に近い。日本サッカーリーグで7回、1968年のメキシコオリンピックでも得点王に輝いた猛者だ。肝炎さえ患わなければ、日本人初のプロサッカー選手になっていたに違いない。
「しょせんアマチュア」との指摘も聞こえてくるが、「史上最強の日本人ストライカーは誰か?」と問われれば、筆者は釜本邦茂一択だ。
マンチェスター・シティのアーリング・ハーランドは194cm・88kg。高度なスピードとテクニックを併せ持ち、なおかつ守備面にも貢献する大型日本人ストライカーは、今のところ見当たらない。
来年1月、プレミアリーグの列強が獲得を目論むヴィクトル・ギェケレシュ(スポルティング)は187cm・90kg。力強さではハーランドに及ばないものの、決定力は同等で、俊敏性では上回る。彼もまた特殊能力者のひとりだ。
残念ながら、日本人にこのタイプは存在しない。ほかの競技を見渡しても、ロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平、プロレスラーのオカダ・カズチカなど、大型の有能アスリートは数少ない。
ただ、ハーランドやギェケレシュは稀有な例であり、世界のトップランクに位置するストライカーが特に大きいわけではない。キリアン・エムバペ(レアル・マドリード)は180cm、ラウタロ・マルティネス(インテル)は174cm、リバプールのモハメド・サラーは175cmだ。
彼らはスピード、ポジショニング、ペナルティボックス内の狡猾さでゴールを量産する。3選手とも体幹が強く、強度の高いチャージにもバランスを崩さない。さらに、常時ゴールを意識したプレーを選択することによって、コンスタントに得点の快感に酔いしれる。見ていて楽しいストライカーだ。
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著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。