三笘薫を見ていると思い出す 飄々と、淡々と客席を熱狂させた往年の名アタッカーベスト10

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 三笘薫は相手のチャージや判定などに対し、めったなことでは激高しない。喜怒哀楽を露わにすることも少ない。飄々と、そして淡々とプレーする。ファイトを剥き出しにしない、アタッカーとしては少数派に属するタイプだ。歴代の日本人選手を眺めても、パッと頭をよぎるのは、かつての日本代表・水沼貴史さん(現解説者)、現役選手では土居聖真(モンテディオ山形)あたりだろうか。

 海外に目を向けるとどうだろうか。攻撃的な選手に的を絞り、三笘に似た匂いのする往年の名手10人を筆者独自の視点でリストアップして見た。

第10位/アンドリー・シェフチェンコ(ウクライナ代表)

 脚光を浴びたのは、ディナモ・キエフのストライカーとして臨んだ1998-99シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝だった。大本命に推されていたディフェンディングチャンピオンのレアル・マドリードを向こうに回し、シェフチェンコはホーム&アウェーの2試合で、チームを勝利に導く全得点(3ゴール)を叩き出した。

 第1戦(アウェー戦)の翌朝、シェフチェンコはマドリードのバラハス空港にいた。チェックインを済ますと、チームメイトと群れず、ひとり長椅子に身を委ねていた。電光石火のごとく蹴り込んだ、前夜の先制ゴールの余韻をかみしめるように。

第9位/アレン・ボクシッチ(クロアチア代表)

 マルセイユ、ラツィオ、ユベントス、ミドルスブラなどで活躍した左利きのストライカーだ。エレガントな雰囲気を漂わせる187センチの長身で、懐が深く、強引ではないところが三笘に似ていた。シュートを打てる場面でも、相手の逆を取り、ゴールをお膳立てするアシスト役に回ろうとする。ポーカーフェイスで、くせ者ぶりと人のよさを併せ持ったテクニシャンだった。

第8位/ミカエル・ラウドルップ(デンマーク代表)

 弟のブライアンもドリブルが得意なアタッカーだったが、兄のミカエルはより沈着冷静、遠くを見る視野があった。左ウイングのラウドルップから右ウイングのフリスト・ストイチコフへ。この大きなサイドチェンジは、ヨハン・クライフが率いたドリームチーム時代のバルセロナを語る時、外せない展開になる。ボールが足に巻きつくような低重心のドリブルは推進力抜群で、高級車を彷彿とさせる滑り出しのよさだった。

 1996年に来日。ヴィッセル神戸でプレーしたのはわずか1年だったが、これまで来日し、Jリーガーとしてプレーした外国人選手のなかでも1、2を争う実力者だったとは筆者の見立てだ。兄弟選手としてはフィリッポ、シモーネのインザーギ兄弟、ロナルド、フランクのデ・ブール兄弟あたりがライバルになるが、合計値でラウドルップ兄弟には及ばない。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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