誰がCFでもいいマンチェスター・シティ。グアルディオラ監督が行き着いたトータルフットボールの極み

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

欧州サッカー最新戦術事情 
第2回:マンチェスター・シティ

日々進化していく現代サッカーの戦術を、ヨーロッパの強豪チームの戦いを基に見ていく連載。第2回は、ジョゼップ・グアルディオラ監督が日々進化させるマンチェスター・シティを取り上げる。

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ゴールゲッターの特殊能力に依存しない攻撃戦術を繰り出す、マンチェスター・シティのグアルディオラ監督(中央)ゴールゲッターの特殊能力に依存しない攻撃戦術を繰り出す、マンチェスター・シティのグアルディオラ監督(中央)この記事に関連する写真を見る<リヤド・マフレズ「偽9番」の謎>

 プレミアリーグ第13節、雪の降りしきるフィールドでマンチェスター・シティはウェストハムを2-1で下した。

 この日の3トップはガブリエル・ジェズス、リヤド・マフレズ、ラヒーム・スターリング。普通に考えれば右からマフレズ、ジェズス、スターリングだが、ジョゼップ・グアルディオラ監督はご存知のとおり普通の監督ではない。

 センターフォワード(CF)はマフレズだった。右サイドが定位置の、というよりそれ以外ほぼ見たことがないマフレズのCFは驚きだった。

 ただ、昨季途中からシティは本物の9番を起用していない。スターリングのCFもあったし、ベルナルド・シウバやケビン・デ・ブライネ、フェラン・トーレスの9番(もちろん偽)もあった。

 そしてついにマフレズ。なぜ、マフレズ? と思ったファンは少なくないだろう。適性から言えばジェズスのほうがCFらしいのだが、最近はずっと右サイドが定位置である。マフレズの右より、ジェズスの右を優先したのかもしれない。

 ところが、マフレズのCFは20分までだった。いつのまにかジェズスが中央、マフレズが右ウイングになっている。これで謎が解けた気がした。

 誰でもいいのだ。

 グアルディオラ監督がバルセロナで「偽9番」をやり始めた時には、誰でもいいわけではなかった。リオネル・メッシをよりゴールに近い場所で前向きにプレーさせるためのファルソ・ヌエベ(偽9番)だった。

 セスク・ファブレガスをCF、メッシをトップ下に置いた3-4-3もやっていたが、メッシをバイタルエリアで前向きにプレーさせる意図は変わらない。右ウイングにメッシを起用したのも、手順が違うだけで意図は同じである。

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