ジダンの窮地を救えるのは誰だ? 大勝しても「変われない」レアル (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

 得点力低下については、戦術構造として単純にストライカー次第で、クリスティアーノ・ロナウドの放出が今も影を落とす。守備に関しては、セルヒオ・ラモス、マルセロが衰え、ダニエル・カルバハルはケガで、ラファエル・ヴァランやミルトンは主力を担う力を示せていない。

 しかし、ジダンは戦犯なのか。もし彼が監督ではなかったら、ぞっとするありさまだったはずだ。

「世代交代の失敗」

 そう批判する声もあるが、ジダンが望んだ選手獲得は一向に進まなかった。

 ジダンは、アーリング・ハーランド(ドルトムント)、ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)、キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)、エドゥアルド・カマヴィンガ(レンヌ)、ダヨ・ウパメカーノ(ライプツィヒ)など、プレーインテンシティの高い選手の獲得を要求したが、ひとりも決まっていない(バイエルンのダビド・アラバは来シーズンの契約が内定したが......)。実質的補強はレアル・ソシエダのマーティン・ウーデゴールのみ、それもレンタルバックだった。

"ガタがきている"のは承知で、一番計算が立つ、去年リーガ王者になったチームをベースにせざるを得なかったのである。

 もちろん、ジダンも批判を避けられない。

 自ら手放したマルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリード)、テオ・エルナンデス、ブライム・ディアス(ミラン)、アシュラフ・ハキミ(インテル)、セルヒオ・レギロン(トッテナム・ホットスパー)、ダニ・セバージョス(アーセナル)などが新天地で戦力になっているのは事実。レアル・マドリードで活躍するのとは別次元の話だとしても、ジダンには選手抜擢に癖があるというか、一度見切ると何をしても認めないところがある。

 ジダンたっての希望で獲得したエデン・アザールはケガが多く、リーガの戦い方に適応できないでいる。8000万ユーロ(約96億円)の移籍金で獲得したスター選手として、このままでは世紀の失敗例となるだろう。縦を突っ切るプレーでプレミアリーグでは一世を風靡したが、リーガは運び、崩す、手数をかけるスタイル重視のため、持ち味が出せないのだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る