2020.11.17

カタカナ表記が定まらないチェルシーの名手。クロスのクセが強い!

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第33回 ハキム・ツィエク

<クセの強いクロスボール>

「ギョエテとは 俺のことかと ゲーテ言い」

 明治時代の小説家、斎藤緑雨の川柳だが、サッカー選手の名前も依然として定まらない。

今季からチェルシーでプレーするハキム・ツィエク はたしてツィエクなのか、それともジィエシュ? シエシュ、ジエク、ズィエク、ツィエシュ......スペルは「Hakim Ziyech」だが、ロシアワールドカップの登録はZiyachだった。

 カタカナの人名表記はこれまでたびたび問題になっていて、最近ではキリアン・エムバペなのかムバッペなのかムバペなのか、バラバラだった。ジネディーヌ・ジダンもズィダン、ジダヌなど、けっこう分かれていたものだ。

 ここではツィエクという表記にしておくが、この先どれで定着するかはわからない。

 アヤックス(オランダ)で活躍して今季チェルシー(イングランド)に移籍してきた。プレシーズンマッチで負傷して出遅れていたが、ようやく試合に出るようになった。

 第8節のシェフィールド・ユナイテッド戦では2アシストを記録、4-1の勝利に貢献している。2つのアシストは、いずれも右サイドから左足で送ったロングクロスだ。

 右サイドからの左足のクロスボールなので、ゴールへ向かうインスイングの軌道になる。インスイングのボールはミートできればゴールに入れやすいが、合わせにくいという難点がある。

 とくにツィエクのようにボールスピードがあって途中でカーブする軌道だと、コースに合わせにいってもボールのほうが速くて、合わせるのが遅れてしまうケースが出てくる。

 ただ、味方が合わせにくいということは、守備側にも触りにくいわけだ。それだけに、クセのあるツィエクのボールを生かすには、味方がどれだけ慣れていくかにかかっている。

 少なくとも相手よりも軌道は理解できるので、ツィエクのクロスはセットプレー的な威力が増していくだろう。チェルシーにはタミー・アブラハムやカイ・ハフェルツといった長身のアタッカーもいる。