ロシアW杯で見えた「世界の潮流」と
「フランス、ベルギーの共通点」 (3ページ目)
そして、最後に優勝国フランスについて触れておきたい。
今大会は、ドイツ、アルゼンチン、スペインといった有力国が早い段階で敗退したことで、2002年日韓大会のような波乱に満ちた大会となった。これら3カ国には前回大会とほぼ同じメンバーが主力だったという共通点があるため、その観点からすれば、以前よりも世代交代を早めなければW杯で勝ち続けることは難しくなったといえるかもしれない。
そんな中、ディディエ・デシャン監督が率いたフランスは、25.57歳という若いチームで20年ぶり通算2度目の優勝を飾った。たしかに守備的と批判されはしたが、周りに流されることなく現実的なサッカーを貫いたことが、波乱続きの大会における勝因となったともいえる。そしてそこには、なりふり構わず勝利だけを求め続けたデシャン監督の揺るぎなき信念が伺えた。
2010年南アフリカ大会。レイモン・ドメネク監督率いるフランスは、大会中に選手が監督に反旗を翻してボイコットを起こすという事件を起こし、それに失望したフランス国民から完全にそっぽを向かれるという暗黒時代を経験した。
そこで地の底に落ちたフランスサッカー界は、組織としても世代交代を断行。1998年W杯優勝メンバーが次世代の担い手として代表チームの改革を行なった。最初に監督に就いたのがロラン・ブランであり、2012年からバトンを受けたのがデシャン。2人は、98年当時のチームメイトたちのサポートを受けながら、自分たちが築いた黄金時代をもう一度取り戻すべく、自国開催のユーロ2016の優勝、そして2018年W杯優勝を目標に前進し続けた。
ユーロ2016では決勝で涙を呑んだが、「あの悔しさが今回の優勝の源」と会見でデシャンが振り返ったように、フランスは国民の前でユーロ優勝を果たせなかったことをバネに、今大会はリアリズムに徹して優勝を果たすことができた。
そしてその背景には、もともと「育成大国」と評されるフランスが、ポスト・ジダン世代の人材を築くために育成組織のバージョンアップを行ない、そこでまいた種がようやく実ったのが今大会だったという事実を見逃すことはできない。
そういう意味では、優勝したフランスだけでなく、4強入りしたベルギーやイングランドも、育成改革の効果を示した国だったという点において、ロシアW杯は中長期的視野に立った育成の重要性をあらためて提示してくれた大会だったといえるだろう。
◇「不自然さ」があったフランスの優勝。VARの活用に議論の余地あり
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