好調アルゼンチン。メッシが輝くために不可欠な2人 (2ページ目)

  • 三村高之●文 text&photo by Mimura Takayuki

 GKだけでなくDF陣も、これまでの代表と比較すると見劣りする。長らく外れていたベテランのCBデミチェリスを招集したのも、駒不足の表れといえる。そしてそのデミチェリスは、トリニダード・トバゴ戦で右足首を痛めてしまった。スロベニア戦ではマスチェラーノがCBに入ったが、3トップもしくは2トップにトップ下という布陣では、マスチェラーノをボランチで起用したいところ。DF陣の薄さが全体に影響を及ぼしている。

 グループリーグ突破に問題はないが、トーナメントに入れば負傷者や警告の累積による出場停止者も当然出てくる。もしこれがマスチェラーノだと大変なことになる。CBで起用されようがボランチでプレイしようが、守備の要は彼なのだ。個人の能力が高いだけでなく、強力なリーダーシップでDF陣を操っている。日韓W杯(2002年)のとき、アルゼンチンは予選で圧倒的な強さを誇った。しかし、キャプテンにして守備の中心だったアジャラが故障で離脱したため、グループリーグで姿を消すこととなった。

 一方、攻撃面ではディ・マリアが出られなくなると痛い。アルゼンチンはメッシのチームのようにいわれるが、巧みなドリブル突破と正確なキックで左サイドを崩す彼の存在は非常に大きい。ディ・マリアからメッシ、アグエロらへの連携でゴールを奪っている。サブを含めFW陣はレベルが高く、もしメッシが欠場しても補うことはできる。しかし、ディ・マリアの穴は埋められない。

 スロベニア戦で、メッシがピッチに嘔吐した。これはバルセロナでも最近何度かあったこと。代表では予選のボリビア戦、親善試合のルーマニア戦に続き3回目。サベーラ監督は、「W杯が迫るこの時期は緊張や不安が高まるのだろう。緊張のしすぎによるものだ」と心配はしていない。しかしキャプテンとして大きなプレッシャーを背負い、本大会の中でもさらに緊張が増していけば、それはやがてプレイにも影響するのではないか。ストレスが不眠や食欲減退を引き起こすことはよく知られていることだ。

 またスロベニア戦では、試合前に集合写真を撮影する際、「マルビナス諸島はアルゼンチンのものだ」という横断幕を掲示した。マルビナス諸島は英名フォークランド諸島。イギリスが支配しているが、アルゼンチンは自国の領土だと主張している。

 同じことはボカ・ジュニアーズ対リバープレートのときにも行なわれていたが、今回は国際Aマッチという舞台。FIFAはサッカーの場での政治的メッセージを禁じており、何らかの処分が下される見込みだ。罰金程度の処分でも、大会前やその最中に課せられれば、せっかくの勢いに水を差すことになりかねない。
 

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