すべてのミランの問題のツケを、本田圭佑一人が払わされた (2ページ目)
皆を失望させた本田のプレイに対し、試合後セードルフはこう語った。つまり前半のすべてのチームの問題のツケを、本田一人が払わされたという形だ。実際、本田はゲームの流れに絡むのに苦労していた。ただそれでも見事なヘディングシュートを放ち、アタランタゴールを脅かしたりもしていたのだが......。
ミランが後半に調子が良くなったのは、本田に代わって入ったエル・シャーラウィーのおかげだと皆が言う。確かにそれもあったろう。しかしヨーロッパ行きの最後のチケットを手に入れようと、後半に入りチーム全体が本気を出すようになったのも大きかったのではないかと私は思う。
さて今回の試合はその内容だけでなく、残念ながら人種差別問題も大きく取り沙汰された。後半の半ばあたりに、ミランのケビン・コンスタンに向けて二本のバナナがスタンドから投げ入れられたのだ(次のホーム試合でアタランタのゴール裏は閉鎖。チームには4万ユーロ、約560万円の罰金が科せられた)。
このバナナを見て誰もが2週間前のバルセロナのダニエウ・アウベスの件を思い出したことだろう。アウベスは投げられたバナナを食べてしまうという誰も予想だにしないリアクションをとり、無言で差別に抗議。この勇気ある行動に共感した選手やサポーターが次々とバナナを食べる写真をソーシャルネットワークにアップしたのは有名な話だ。しかし今回のコンスタンのリアクションはもちろんそれとは異なり、確実に気分を害していた。
ミランと人種差別問題は切っても切れない歴史がある。どこのスタジアムに行ってもバロテッリが集中的に差別チャントの標的になるのは、何度も問題になりながらも今も変わらない。また、2012年にはこんなこともあった。4部リーグとのある親善試合で度重なる差別チャントを受けたガーナ人選手のボアテング(現在はシャルケ所属)が怒ってピッチを出て行き、他のチームメイトもそれに続いたため、結局、試合は中止となってしまったのだ。この事件はサッカーにおける人種差別問題の象徴ともなり、その数ヵ月後にはその主役となったボアテングがスポーツ界での差別根絶のため国連でスピーチをしている。
アタランタ戦の出来事は、非難の輪が広がっていても、それでも差別が無くならないということを物語っている。それはイタリアだけではなく世界でも同じことだろう。
あと一ヵ月でW杯が始まる。地球のあらゆる地域を代表した選手たちが共に戦う素晴らしい舞台だ。しかしそこでどんな見事なプレイがくり広げられても、こうした差別行動があればサッカーの魅力は損なわれてしまう。W杯では、ぜひともピッチの中での出来事だけを語りたいものだ。
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