【EURO】地元ポーランド敗退。敗因は「高すぎたテンション」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 地の利も明らかだった。地元サポーターはチェコがボールを持つと、耳をつんざくような指笛で威嚇。これに気圧されたかのように、チェコは後ろでボールを回すばかりで、攻撃らしい攻撃が作り出せないどころか、中盤でボールを失うミスも目立った。

 にもかかわらず、レバンドフスキが、ポランスキが、なかなかゴールを決められない。

 となれば、地力で勝るチェコへと流れが変わっていくのは、当然の帰結だった。結果論ではあるが、この後、チャンスらしいチャンスを作れなくなったポーランドは、事実上、この時点でグループリーグ突破の可能性を失ったのである。

 対照的に、試合序盤は後ろでボールを回すことしかできなかったチェコは、時間の経過とともに、おもしろいように縦パスが入るようになった。

 前半なかば過ぎから、左MFのピラルが単独のドリブル突破で攻撃のリズムを作り出すと、次第に左サイドバックのリンベルスキや、ボランチのプラシール、FWのバロシュらが絡んで、攻撃に厚みが生まれていく。

 これに対し、ポーランドももう少し慎重に試合を進めれば、まだ勝利の可能性は残されていたのかもしれない。

 しかし、地元の大声援、そして勝てば決勝トーナメント進出という状況が、ポーランド選手の意識を攻撃へと傾けさせた。ポーランドのスムダ監督が「モチベーションが高すぎた」と振り返ったように、中途半端な打ち合いに出てはボールを失い、むしろチェコにチャンスを与える結果となった。

 一方のチェコは、開催国を相手に「耐えてカウンターアタック、という形を狙っていた」と、ビレク監督。前に出てくるポーランドを巧みにいなし、注文通りのカウンターから、最後は左サイドを駆け上がったイラチェクが冷静にDFをかわし、決勝点を奪った。

 引き分けでは突破の可能性がないポーランドは、さらに攻撃姿勢を強めるが、さしたるチャンスも作れない。結局、逆転はおろか、追いつくことさえできずに試合終了のホイッスルを聞くこととなった。

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