【イングランド】選手年俸推定5位のアーセナルを3位に導いたベンゲル (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 2006年のスティーブ・マクラーレンの場合と同じで、レドナップが代表監督候補に推されたのは、彼のキャリアがほんの一瞬だけ輝いたときだったからだ。シマンスキーは監督としてのレドナップのキャリアを、1985年に弱小クラブのAFCボーンマスで始まったときから分析した。シマンスキーによれば、レドナップのチームはどのディビジョンでも、選手年俸の総額から予測できる順位よりもたいてい5つ上の成績をあげている。すばらしい業績だが、これをファーガソン並みに評価することはできない。シマンスキーの分析では、下部リーグやプレミアリーグの下位にいるチームのほうが、選手年俸に見合う以上の順位をあげるのは簡単になる。レドナップのチームが本当に上位にいたことは、ほとんどない。

 今シーズンのトットナムは推定でリーグ6位の選手年俸を払い、成績は4位だった。しかし、ロイ・ホジソンが資金の少ないウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンを10位に引き上げたことにはまったくかなわない。ついでに言うなら、もしフットボール協会(FA)が単純にプレミアリーグで好成績をあげたイングランド人を代表監督にしたければ、ニューカッスルのアラン・パーデューにやらせるべきではないか。

 キャリア全体を見通せば、レドナップはイングランド人で今、最も優れた監督かもしれない。だがそれは、フランス人で今、最も優れた野球の監督は誰かと言うのに似ていなくもない。プレミアリーグを代表する監督は、今もベンゲル(フランス人)であり、ファーガソン(スコットランド人)であり、今年は解任されたがダルグリッシュ(スコットランド人)だ。

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