サッカー天皇杯「下剋上の歴史」を紐解く 国立でカップを掲げるのはレイソルorフロンターレどっち?

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

 防戦一方となりながらも用意周到のセットプレーから先制点を奪い、その後の猛攻を身体を張ってしのいでいく。ところが終了間際に同点とされると、延長戦ではPKを献上。絶体絶命の窮地に立たされたが、相手の若きエースのシュートをGKがストップすると、PK戦でもこの守護神が躍動する。同点弾を決められたキッカーのシュートを食い止め、史上最大の下剋上を実現するのだ。

今年の天皇杯を制するのはレイソルorフロンターレ? photo by AFLO今年の天皇杯を制するのはレイソルorフロンターレ? photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る その時点でJ1の3位に位置していたサンフレッチェ広島と、J2の18位に低迷していたヴァンフォーレ甲府が対峙した昨年の天皇杯決勝。実力下位チームが上位チームを撃破する唯一無二とも言えるシナリオで、甲府がクラブ史上初タイトルを獲得した。J2チームがJ1チームに勝利して優勝するのは初のケースだった(J2チームの優勝はJ2対決となった2011年のFC東京に次いで2チーム目)。

 一発勝負のカップ戦では、戦前の予想が覆されることは珍しくはない。しかし決勝にかぎると天皇杯は、実は波乱が起きづらい大会だ。勝ち上がりの過程でジャイアントキリングが頻発するのがこの大会の醍醐味のひとつではあるものの、ファイナルの舞台では力の差が比較的反映されている。

 Jリーグが始まって以降に行なわれた過去の30大会の決勝を振り返ると、そのシーズンのリーグ戦の順位が上のチーム、あるいはカテゴリーが上のチームが勝利するケースが大半を占める。戦績的には23勝7敗で、勝率は75%を超えている。

 上位チームが敗れた7大会のうちのひとつが先述した昨年大会。残り6つのなかで印象的だったのは1998年大会だろう。この年かぎりで横浜マリノスに吸収合併される横浜フリューゲルスが清水エスパルスを下し、クラブの最後を優勝で締めくくったのだ。

 この年の横浜Fはリーグ戦の1stステージで8位、2ndステージでは7位と中位に位置したが、清水は2位→5位と、どちらのステージでも上を行っていた。合併発表後の公式戦を9連勝で締めくくり、クラブ最後の試合で意地を見せた格好だ。

 横浜Fは1993年大会でも、1stステージを制した鹿島アントラーズを延長の末に6-2で撃破しており、これが2度目の天皇杯制覇だった。

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