Jリーグ7月のベスト11を独自選考 「今季最大の発見」「シーズンMVP級の活躍」を見せる選手たち (3ページ目)
【今季最大の発見は川崎のセンターバック】
川崎のセンターバック(CB)の高井幸大は、今シーズンのJリーグの最大の発見の一つだろう。負傷者が続出するなかで1年目の高井が起用されたのだが、高さとスピードを兼ね備え、また正確なパスも出せるCBとしての総合的な能力の高さを発揮している。
U-20ワールドカップではサイドバックとして起用されて迷いが生じたのか、帰国後はミスを多発していたが、7月に入ってようやく復調。横浜FMとの試合ではアンデルソン・ロペスやエウベルと渡り合って、抜かれかけても体を入れて深いタックルでボールを奪う場面もあった。
無理な体勢でもプレーできるのは大きな魅力。まだまだ、判断ミスも多いが、経験を積んでいけば将来は日本を代表するDFになれるだろう。
高井と組むCBには、横浜FM戦で決勝ゴールを決めて脚光を浴びた車屋紳太郎を入れた。高井をサポートさせたいからだ。谷口彰悟が抜けたあと、川崎のDFラインでは車屋がようやくリーダーシップを発揮できるようになってきた。
こうして、強豪チームの選手を中心に「コンビネーション」を重視しながらベスト11を選んできた。
当然、GKもチームもその流れで選考したい。
今や、GKは単に相手のシュートをキャッチするだけでもなければ、ディフェンスラインの背後をカバーするだけの存在でもなくなっている。DFとの間でパスを交換して攻撃を組み立てる役割が要求されるようになってきたのだ。
GKがフィールドプレーヤーの1人としてプレーすることによって、味方のフィールドは11人となり、相手のフィールドより1人多くなることができるのだ(守備側のGKはゴール前を離れるわけにはいかない)。
現在のJリーグでは、各監督の哲学によって古典的なGKと現代的なGKが併存しているのが現状だ(もちろん、バックパス・ルールがあるので古典的GKといえども足の技術も必要なのだが)。
そこで、今回はフィールドプレーヤーとしてもプレーできるGKの代表として、横浜FMの一森純を入れた。
今季、期限付き移籍で横浜FMに移った一森は、プレー経験を積むとともにこのチームで役割を確立。新しいスタイルのGKとしての魅力を発揮し始めている。
付け加えておきたいのは喜田拓也という選手の重要性だ。7月に横浜FMは足踏み状態となったが、原因の一つは喜田の欠場だったのである。
7月最初の湘南戦で喜田は「体調不良」で欠場。天皇杯の町田戦では復帰し、川崎戦ではベンチスタートで後半から投入されたが、やはりコンディションは良さそうではなかった。
豊富な運動量を持つ喜田は今季も横浜FMのダイナモとして中盤を支えている。すっかり横浜FMに馴染んだ渡辺皓太とのコンビネーションが、この超攻撃的チームに安定感をもたらしている。
その喜田が欠場したことで横浜FMは失速してしまったのだ。つまり、不在だったことによって喜田の重要性がかえってクローズアップされたというわけである。
著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。
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