「普通の男の子に戻りたい」と本気で思った。レジェンドたちの高校サッカー大座談会 (2ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • 山田真市/アフロ●写真 photo by AFLO

スタンドに観客が入りきらずピッチに...

森崎「僕らのときも本当にたまたま。本命と見られていた清商には絶対に勝てないと思っていたら、初戦で負けてくれた。決勝は帝京に5-0で勝ちましたが、練習試合でも負けていなかったので、負ける気はしなかったし、ラッキーでした。優勝後がすごくて、次の日に学校に行ったら、校門の前に500人くらい追っかけの女の子が集まっていて、電車に乗ってもついてくるわけです。地元の駅を降りても100人、自宅に着いても30人くらいはいて、思わず窓から一番可愛い子を探しちゃいました(笑)」

平澤「最初はうれしいよね。だって、女の子にモテたいから頑張っていたわけだから。でも、しばらくするとそれが面倒になっちゃう。だって、オレなんて普通に彼女と街を歩けなかったから、騒がれちゃって。プロになってある程度の対価と引き換えにプライバシーが制限されるならいいけど、高校サッカーは勝っても何もない。だから、キャンディーズじゃないけど、『普通の男の子に戻りたい』って本気で思っていました(笑)」

――平澤さんが3年時の準々決勝の帝京戦は、高校サッカーの名勝負のひとつとして知られています。0-0のスコアレスドローで終わり、PK戦で東海大一が勝ってベスト4進出を決めました。

平澤「チャンスの数は圧倒的だったのに、オレがシュートを外しまくって。しかも、シュートブロックされた時に、相手の体が飛んできて左ひざの靭帯を伸ばしちゃった」

山田「内容的には完全に東一が勝っていましたし、PK戦の最後、先攻だった帝京の5人目の礒貝(洋光、元ガンバ大阪など)さんのシュートをGK中原(幸司、元清水エスパルス)さんがキャッチして決着。礒貝さんは、その前の試合では豪快にPKを決めていたのに、あの場面では正面に蹴って」

平澤「オレは第5回全日本少年サッカー大会にFC浦和(埼玉)で出ているんだけど、その大会に熊本の河江小学校で出ていたのが礒貝で、ふたりとも優秀選手に選ばれたりした。一緒のチームでやったのは選手権後の高校選抜だけでしたが、(後攻5人目のキッカーだった)オレに決められて負けるのが嫌で、『その前に(PKを)失敗する』って。森山(泰行、元名古屋グランパスなど)なんか、試合中に頭を切って包帯まで巻きながらプレーしていたのにね(笑)」

江原「会場は大宮サッカー場で、当時中1だった僕はゴール裏で見てました。スタンドに観客が入りきらずに、ピッチまで下りている人もたくさんいましたからね」

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