元セレソンvsスピードスターの得点王争いは、意地とプライドがぶつかった極上の一戦だった

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 まるでスローモーションを見ているかのようだった。右サイドに抜け出した家長昭博が、利き足とは逆の右足でふわりとしたクロスを送り込むと、中で待ち受けたのはレアンドロ・ダミアンだった。

 188cmの長身がひときわ高く宙に浮かび上がると、そのまま地面にたたきつけるようなヘッドを見舞う。ワンバウンドしたボールは横っ飛びするGKの反応をあざ笑うかのように、ゆっくりとネットに吸い込まれていった----。

ゴールを決めて喜びを爆発させたレアンドロ・ダミアンゴールを決めて喜びを爆発させたレアンドロ・ダミアンこの記事に関連する写真を見る すでに優勝争いも、ACL争いも決着がついて迎えた今シーズンの最終戦。しかし、圧倒的な強さで連覇を成し遂げた川崎フロンターレと、最強王者に追いすがった横浜F・マリノスによる頂上決戦には、ここまで22ゴールで並ぶレアンドロ・ダミアンと前田大然の「得点王争い直接対決」という付加価値が備わっていた。

 試合開始から両チームはともに、「我らがエース」にボールを集めようとしているように見えた。一方で敵のエースには絶対にゴールを与えない、という気迫が漂っていた。

 横浜FMは右サイドを起点に攻め、逆サイドに位置する前田に次々にクロスを送り込む。開始早々にはエウベルのクロスを前田が合わせようと試みるも、マークについた山根視来が身体を張った守備でシュートを打たせない。

 15分にも前田に決定的な場面が訪れる。右足でコースを狙ったシュートは相手DFに当たりながらもゴールに向かったが、川崎の守護神チョン・ソンリョンが身体を横に投げ出して、これを阻止した。

 対する川崎は、横浜FMの攻撃に後手を踏み、レアンドロ・ダミアンを生かすことができないでいた。それでも24分には登里享平が絶妙なスルーパスを供給。これをレアンドロ・ダミアンがフィニッシュに持ち込んだが、相手GKのセーブにあってゴールにはつながらない。

 得点の匂いを濃厚に漂わせながらも、ゴールはなかなか生まれない。そんなひりひりとした緊迫感が日産スタジアムを包んだ。

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