ゼビオに経営体制が一新。ヴェルディの激動を永井秀樹はどう感じたか (4ページ目)

  • 会津泰成●取材・文 text by Aizu Yasunari
  • 写真提供:東京ヴェルディ

――精神的につらい時期だったんですね。

 FC琉球戦以降も、「ピッチの上ではサッカーだけに集中しよう」という話は毎日のようにしていたし、選手たちもその気持ちでやってくれた。でも「心/技/体」の技術、体力という言葉の一番前にくるのは心であるように、心が乱れると、技術も体力も十分発揮できなくなってしまうことを改めて実感した。

 もちろんそれだけを言い訳にはできないし、それでも何とか選手の気持ちを高めるのが自分に課せられた役割。何回かミーティングの中でフリューゲルス時代の話をさせてもらった。「自分自身、ひとつ負けた時点でクラブが消滅する、という究極な出来事を経験した。それに比べたら、今の俺たちはまだ幸せだ。ヴェルディというすばらしいクラブがなくなることはないし、なくしてはいけない。なおかつ我々は好きなサッカーができているのだから、目の前の試合に集中して勝利を目指そう!」というのは伝え続けてきた。でもやっぱり、難しさはあったと思う。

 自分の経験だけで物事を考えてはいけないと思うけど、自分は現役時代、年俸のダウン提示を受けたとしても、むかつきはしても気持ちがへこむことはなかった。逆に闘志に火がついて、「じゃあ来年活躍してやる、年俸アップを勝ち取ってみせる!」と気合いを入れたけど、今の若い選手の話を聞いていると、いきなり年俸のダウン提示を受けると頭の中が真っ白になって、サッカーに集中できなくなってしまう。それが、今の若者のメンタルなんだな、と感じた。

 それは考えさせられたと言うか、どれだけすばらしい才能を持っている選手でも、力を最大限発揮するためには心を整えることや、より「心の逞(たくま)しさ」が重要だと、強く考えさせられたシーズンでもあった。

 経営体制の変更についても、永井監督はポジティブに捉えている。しかし一方で、シーズンオフにはヴェルディの主力選手が他クラブに移籍するニュースも目立った。次回は、自身が手塩にかけて育てた若手有望株が引き抜かれることについて、永井監督が複雑な心情を明かす。

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