J王者川崎にも身につけてほしい、鹿島、浦和のACLにかける「熱量」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Imaginechina/AFLO

 だが、サッカーは脈絡がないスポーツでもある。浦和はそこから3点を奪い3-0で勝利を収めた。前半13分、負傷した柏木陽介に代わって投入された長澤和輝が活躍するという偶然も重なった。浦和は選手交代を機に、今季一番とも言うべき見事なサッカーを展開。火事場の馬鹿力と言いたくなる爆発力を見せつけた。

 鹿島は前回の、そして浦和は前々回のアジアチャンピオンだ。クラブとしてこの大会の重みを心得ている様子だった。絶対に落とせない試合に傾ける、並々ならぬ熱量を感じ取ることができた。漠然とした言い方になるが、比較対象をJリーグ2連覇中の川崎に求めると、それは鮮明になるのだった。

 H組の川崎は最終戦でシドニーFC(オーストラリア)と対戦、4-0で勝利した。しかし、上海上港対蔚山現代で上海が勝利したため、ベスト16入りを果たすことができなかった。

 川崎の自力突破の目は潰えていた。しかも蔚山にとってこの一戦は事実上の消化試合。川崎と2位の座を争うライバル上海の勝利は当初から予想できた。突破の可能性は上海と直接対決した第5節終了時に、ほぼ失われていた。

 その上海戦の結果は2-2だった。後半21分に谷口彰悟のゴールで2-1としたまではよかったが、その5分後、元ブラジル代表フッキに同点ヘッドを許し、そのままタイムアップの笛を聞いた。

 目を覆ったのは2-1としてからの戦い方だ。ひと言でいえば緩い。大会の重みをわかっていないと言われても仕方のない戦いぶりだった。2-2にされた後も、Jリーグを2年連続で制したチームなら、これはまずいともう少し必死に追いかけようとするものだが、その熱は見る側に伝わってこなかった。鹿島、浦和との差をそこに見た気がした。あっさりしているというか、淡泊というか、終盤に行なわれたメンバー交代も、説得力に乏しい采配と言えた。

 国内リーグとチャンピオンズリーグ(CL)。欧州ではその優先順位はハッキリしている。国内リーグを制しても、CLでグループリーグ落ちすれば、そのシーズンの価値は激減する。監督交代にも発展する。

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