2019.01.17

小笠原満男が引退して発見したこと。
サッカー、東北人魂、アントラーズ

  • 佐野美樹●取材・文・撮影 text & photo by Sano Miki

 2019年1月4日、岩手県花巻市――。朝の冷えきった体育館の温度計はマイナス2度を示していた。底冷えする寒さのなか、きちんと並び座った子どもたちは、プロサッカー選手が来るのを今か今かと待ちわびていた。そんな子どもたちの前に姿を見せると、小笠原はマイクを持ち、こう自己紹介した。

「みなさん、おはようございます。元、鹿島アントラーズの小笠原満男です」

東北人魂としての復興支援・サッカー普及活動を続ける小笠原満男 2018年12月27日、突然引退の発表をした小笠原は、翌28日にはカシマスタジアムで引退会見を行ない、21シーズンもの長い間駆け抜けたプロ生活の幕を、こちらに悲しむ時間も与えないまま、スッパリと閉じてしまった。

 そして年が明けると、例年と変わらず、「東北人魂」の活動の場に小笠原の姿はあった。

 東北人魂としての、年始に行なわれる東北での復興支援およびサッカーの普及活動も、東日本大震災から今年で8度目となった。当初からずっと、この活動における理念や信念は変わらず、その先頭に立つのが小笠原であることも変わりはない。しかし、ひとつだけ大きく今年で変わったことは、その小笠原が現役選手ではなくなったことだった。

 現役を退いて、初めて迎えた年末年始を小笠原はどんな気持ちで過ごしていたのだろうか。これからの彼の描くビジョンも含め、話を聞いた。

―― まず、引退会見を終えて、今はどんな気持ちですか?

「言ったらスッキリしたなぁ、というのが正直な気持ちです。今までたくさんの方々にお世話になって現役生活を続けてきたわけですけど、引退を決めてからはいろいろな事情もあり、そのすべての人にすぐに自ら報告できない状況だったので。会見まではみんなに言えない申し訳なさがずっとありました」

―― 以前、もし引退をするときはスパッと辞めたいと話してくれました。未練などは感じていませんか?

「それはしょうがない。もう覚悟はしていましたから。やめるって、決めたので。もちろん、会見を行なうまでは自分のなかですごいモヤモヤがあったし、いろんな感情があったけど、会見を終えてからは全然スッキリして、次に向かうって気持ちになっていますね。楽しみなことが多いから。さぁ、次、何しよう、あるいはこれしてみたいっていうのが出てきたので。引きずるとか、そういう気持ちはないですね」