1年でのJ1復帰を果たせず。大宮アルディージャに足りなかったもの (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 それでも人数をかけて守ることで、相手に決定的な場面を与えない。ギリギリのところで踏ん張って、時を刻んでいった。

 そんななかで訪れた相手の退場劇――。苦しい時間を過ごしていた大宮の選手が、この状況に安堵したとしても不思議はないだろう。

 もっとも、一発勝負の戦いで隙を見せていけないのは鉄則だ。たとえ優位な状況になったとしても、である。なにより、東京Vは追い込まれていたのだ。開き直った彼らに、怖いものはなかっただろう。逃げ切る意識が働いた大宮と、なりふり構わず向かっていく東京V。この両者の意識の違いが、結果的に勝敗を分けたように思う。

 大宮にスイッチが入ったのは、結局、追いかける展開となってから。長身FWシモヴィッチを投入した残り10分は、シンプルに前にボールを送り込み、相手を自陣に釘づけにした。しかし、一度失った流れは二度と戻ってこなかった。シモヴィッチのボレーシュートがポストを叩いた時、大宮の敗退は決定した。

 振り返れば、今季の大宮は常に苦しい戦いを強いられてきた。1年でのJ1復帰を目指しながら、開幕8試合で早くも5敗を喫するなど低迷。第10節から3連勝と復調の気配を見せたかと思えば、第13節からは3戦未勝利と勢いに乗り切れなかった。

 浮き沈みの激しい戦いを繰り返し、終盤に粘り強く勝点を積み重ねたことでプレーオフ進出の権利を手にしたものの、優勝争いにはついに絡めぬまま。自動昇格を決めた松本山雅FCや大分トリニータと比べて、チームとしての完成度が劣っていたと言わざるを得ない。

「最初の何試合かは、J2の戦いに戸惑った部分はありました。波に乗ることができなかったことが、最大のミスだったと思います」

 石井正忠監督は、力なく今季を振り返った。

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