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サンフレッチェ、終戦か。森﨑和幸が
示した泥沼から脱出する方法 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 ところが、シーズン終盤にきて、そのベースが揺らぎ始めている。

 象徴的なのは、パトリックだろう。強靭なフィジカルを生かして前線で起点となるとともに、爆発的なスプリントでスペースを突く。献身的なプレスで守備のスイッチを入れる役割も担っていた。ところが、攻守両面でカギを握っていたパトリックにキレが失われ、得点源としての役割も果たせなくなっている。

 現状の戦いは個の力に依存する部分が大きいため、その選手が不振に陥るとチーム自体が機能しなくなる。とりわけ、その問題は流れを失ったときに顕著に露呈する。

「攻め込まれたことでラインが下がって、相手の勢いをモロに受けてしまった。取ったボールを運べないという問題もあった。運べる選手がいなかったので、取ったボールがつながらない」

 青山が言うように、つなぐ意識の少ない今のスタイルでは、ボールの落ち着かせどころがなく、跳ね返しても再度相手に奪われて、波状攻撃を浴びる状況に陥りやすい。勝利を収めた開幕のコンサドーレ札幌戦でもその問題は垣間見えていたが、その時はチーム作りの段階であり、今後の改善が見込めるものだった。

 ところが、シーズン終盤になっても、同様の課題を抱えたまま。結果を出すなかで看過されていたテーマが、ここへきて露呈した格好だ。

 この磐田戦では、今季かぎりで引退を表明した森﨑和幸が81分からピッチに立った。コンディション不良で離脱していた広島一筋、37歳のベテランは、この試合が今季初出場だった。しかし、押し込まれた展開のなかで流れを変える役割は果たせず、「どこかでこっちのリズムに戻したかったけど、モロに圧力を受けて、自分自身もリズムを変えられなかった。何も力になれなかった」と、肩を落とした。

 しかし、長いボールを蹴ってピンチを回避しようとする他の選手とは異なり、森﨑は奪ったボールをすぐさま味方に預けようと、シンプルなパス出しで流れを生み出そうと腐心していた。長く広島のサッカーを支えてきたチームの頭脳は、限られた時間のなかでメッセージを残したように思う。

 森﨑の示した姿勢こそが、苦境に陥った今の広島に求められる。

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