居残り練習もキュウリも禁止。ベンゲルがグランパスで見せたこだわり (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 このエース温存のエピソードが表すように、ベンゲルのコンディション管理は徹底していた。練習はいつも90分以内に収められ、居残り練習は禁止された。

「まだ若かったから、練習後にオカ(岡山哲也)とリフティングしながら遊んでいたんだけど、それだけでも激怒されたからね」

 そう振り返るのは、当時22歳で体力があり余っていた小倉隆史である。ベンゲルの視線は練習後だけでなく、オフにまで及んだ。ベンゲルは選手たちにこう告げた。

「彼女とデートするのは一向に構わないが、一緒に歩くな。お前たちは座っていろ。オフはフリー(自由)じゃない。レスト(休息)だ!」

 徹底していたのはコンディション管理だけではない。食事の管理も同様で、遠征先のホテルの食事メニューにも細かく指示を出した。

 試合前や試合後には炭水化物や脂質を一切摂らせず、胃に負担のないものがリクエストされた。試合前の食事は3時間前までと定められ、チーズもオリーブオイルもかかっていないシンプルなパスタが用意された。それに加えて、バゲット、皮をはいだ鶏の胸肉、温野菜が並んだ。通訳を務めた村上剛がそれに補足する。

「オレンジジュースも禁止なんです。あるときにその理由を訊ねたら、胃に酸が溜まるからと。キュウリも禁止だったんですけど、瓜系は体が冷えるからと。ベンゲルは理路整然と理由を答えてくれました」

 サントリーシリーズ(第1ステージ)を2位で終えたヴェルディは、三浦知良をセリエAのジェノアから復帰させ、戦力をさらにアップさせていた。

 8月26日のゲームは、小倉のゴールでグランパスが前半12分に先制したが、ストイコビッチに代わってトップ下に入ったフランク・デュリックスが次第に中村に抑えられ、後半に入ってスコアをひっくり返された。後半40分には森山泰行がジャンピングボレーを炸裂させて同点に追いついたものの、その4分後に、ビスマルクに勝ち越し弾を許して2-3で敗れた。

 1点リードした前半24分に小倉が2点目を決めたかと思われたが、キーパーチャージだとしてゴールが取り消されるという微妙な判定が、勝敗を大きく左右した。

 大一番を落としたグランパスは、勝ち点12でヴェルディと柏レイソルに並ばれた。だが、それでも得失点差でグランパスは首位を守っていた。

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