ジュビロで覚醒して帰還。ハリルよ、
サンフレッチェ川辺駿を見よ!

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

2018年、私のイチオシ「Jリーガー」(2)
川辺駿(サンフレッチェ広島/MF)

 サンフレッチェ広島のアカデミーは、森﨑和幸・浩司の双子の兄弟を筆頭に、駒野友一、髙萩洋次郎、槙野智章、柏木陽介ら数多くのタレントが輩出してきた。

 Jリーグでも屈指の下部組織を備える広島は、金銭的に恵まれているわけではない。だからこそ地方クラブが生き残るため、育成型クラブの道を着実に歩んできた。とりわけ、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が指揮した時代は、スタメンの半数近くをユース出身選手が占めたこともあった。

ジュビロ磐田から今季サンフレッチェ広島に帰ってきた川辺駿ジュビロ磐田から今季サンフレッチェ広島に帰ってきた川辺駿 しかし近年は、そのクラブのアイデンティティが崩壊しつつある。

 そのキッカケは、2012年のJ1リーグ初優勝だろう。悲願の初タイトルを手にしたことで、育成型クラブは常勝を義務づけられたチームへと変貌。毎年のように主力が移籍したものの、他クラブから実績十分の選手を補うことで、チーム力を維持してきた。

 一方で、決して広島ユースが選手を育てられなくなったわけではない。高円宮プレミアリーグでは常に上位に顔を出し、チャンピオンシップでは過去7年で2度の優勝と1度の準優勝を成し遂げている。また、毎年のようにユースからトップチームに昇格しており、選手の供給源の役割も維持されている。

 しかし、3度の優勝経験を誇るメンバーが軸をなす主力の壁を打ち破るのは容易ではなかった。昇格しても出場機会はほとんどなく、2年目、3年目ともなれば他クラブにレンタル移籍となる。そして、そのまま帰ってこないケースも少なくはない。

 2015年にジュビロ磐田にレンタル移籍した川辺駿(かわべ・はやお/22歳)も、同じ道を歩むかと思われた。

 川辺は中学時代から広島の下部組織に在籍し、ユースでは高校1年次からレギュラーを掴んだ。主要ポジションはボランチながら、トップ下でも起用される攻撃能力が最大の持ち味だ。

 2013年の高校3年次には、ユースに在籍しながらプロ契約を締結するなど、クラブもこの才能に高い評価を与えていた。同年にはリーグ戦で3試合に出場し、ACLのピッチにも立つなど、今後の飛躍が期待されていた。

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