川崎F・中村憲剛が奪還を誓う「2007年の忘れ物」 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 昨季、ケガのため1年を通してプレイできなかった小林が右サイドハーフに定着すれば、トップ下の中村の役割も変わるという。

「去年は(1トップの大久保)嘉人や(左サイドの)レナトに近い位置で、FW的な役割をすることが多かった。でも、そこに(小林)悠が加わると、自分は少し下がったほうがいい。ボランチのパウロ(パウリーニョ)や(大島)僚太の近くでプレイして、『三本の矢(大久保、レナト、小林)』を生かしたり、『三本の矢』が前に出ていって空いたスペースに入っていったりするイメージ。去年みたいに飛び出してゴールを狙うのも大事だけど、バランスを崩す場合もあるから、見極めながらプレイしたい」

 また、自身のテーマとしては「6割ぐらいの力でプレイすること」だと中村は言う。これは、何も「キャンプ中だからセーブしながら」というわけではない。力の出しどころと抜きどころ、走る場面、止まる場面などのメリハリをしっかりつけることを意味している。

「FW気味にプレイしていた去年、ゴール前でいかに力を発揮できるかを考え、『出力』というキーワードが生まれたわけですけど、それは中盤でも同じ。動き回れば、マークが外れるというわけではないし、走りながらプレイすると、どうしてもミスが増える」

 確かにリオネル・メッシをはじめ、バルセロナの選手たちはパスを受ける瞬間、スピードを落とし、正確なトラップを心がけている。

「嘉人もそう。だから、パスを受けるときは止まって正確にトラップする。前を向いたり、ターンしたりするときはギュンってスピードを上げる。無駄をもっとそぎ落とせば、プレイの精度はもっと上げられる。それを全員ができれば、ボールは絶対に失わない。ずっと保持していられる」

 的確なポジションを取り、そこに速いパスを正確に入れ、しっかりとトラップして素早く前を向く。それを緻密に繰り返し、攻撃を構築していく。ひとりひとりが技術を磨けば、それがチームの力にダイレクトで反映される――風間監督3年目を迎える川崎Fのサッカーにブレはない。

 あとは、相手にどれだけ守りを固められようと、前から激しいプレッシャーをかけられようと、焦(じ)れず、臆病にならず、スタイルを貫けるかどうか。それができたとき、2007年の“大きな忘れ物”を、取り返す機会がやってくるに違いない。

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