鈴木大輔(柏)が語る「CBとして代表で守ることの面白さ」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • スタジオ・アウパ●写真

「自分はピッチでの感情はすべて覚えている方です。我を失って味方を叱る、みたいなことはしない。味方選手がどう感じるか、それを考えて感情を出す方。自分としては、うまくいっていないときも人に強くいける良さはあるので、そこは調子が悪くても出せるようにしていますね。コンタクトプレイで自分のプレイのリズムを作れますから。そこで余裕が出て、良いパスも出せるようになるんです」

 性格的に極めてロジカルで、ディテールにこだわる。

 東アジア杯、代表デビュー戦となった対オーストラリア(3-2で日本の勝利)でも、生来の冷静さを失っていない。敵のプレスが弱ければ、積極的にボールをボランチのポジションまで運ぶしたたかさをみせた。先制点の場面では、鈴木の縦への鋭いくさびのパスが起点になっている。それを豊田陽平が落とし、斎藤学がスルーし、大迫勇也が決めたが、くさびのパスのタイミングと強度は秀逸だった。

 一方で後半の2失点目は、後悔がないわけではないという。敵FWに食いついたとき、味方CBの千葉和彦が鈴木の抜けたスペースのカバーに入ったことで、千葉が付いていた相手FWがフリーになり、そこにボールを出されて失点を浴びた。自分のアクションでボールを奪うことができていれば最善だったわけだが、インターセプトに失敗したときに味方とどう連係すべきか、彼は対話を尽くしたという。

「失点したら、もちろん責任を感じますよ。でも結局のところディフェンダーというのは、やられた経験は二度と繰り返さない、という部分を積み重ねていくしかない部分もあるんです。やられるパターンというのはやはりあるから、そこで対処法を作り出すようにしていますね。その意味で言うなら、“最高のセンターバックになるにはやられる経験も必要なのかな”とも思います」

 他人事のように語る鈴木は、客観性思考に富んでいる。彼はそうやって石を積み上げるように着実に自分の間合いを作ってきたのだろう。忍耐強く待ち、いつか流れを引き寄せる。そのディフェンススタイルは彼の人生哲学そのものでもある。

 常に各年代の代表に選ばれてきた鈴木だが、プロ選手としては決してエリートではない。新潟では入団以来3シーズンで、リーグ戦はたったの5試合出場。プロで3シーズン出場機会のないルーキーには黄信号が灯るだけに、鈴木にとってはプロ生活における瀬戸際だった。

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