【高円宮杯】ユース世代も頂点に立った広島。未来を見据えた「育成術」 (3ページ目)
また、もうひとつの理由として挙げられるのが、メンタル面の強さ。すなわち、いい意味での精神論が、広島にはまだ残っているのである。
連覇を置き土産に今年限りで退任する広島ユースの森山佳郎監督は、冗談混じりに「僕がハーフタイムに指示するのは、『走れ!』とか、『戦え!』とか、そんなことばかり」と言い、こう語る。
「うちでは練習でもケンカになるくらい、かなり激しく戦わせている。毎日の練習を激しさや緊張感がある中でやってこそ、自分の武器が試合でも出せるようになる」
東京Vユースとのチャンピオンシップでも、自分たちの7本を大きく上回る17本のシュートを浴びながら、「ゴール前の(ピンチの)シーンがたくさんあったが、誰かが体を寄せたり、(シュートを)止めたり、魂で戦ってくれた」と森山監督。45歳の名将は「精神的な部分で勝負できた」と選手を称えた。
Jリーグが誕生して20年。その間、ユース年代における指導も進歩し、特に技術レベルの向上は目覚ましい。
だが、せっかく習得した(はずの)技術がどれだけ実戦で発揮できているのか。技術の向上とともに、"軽さ"や"甘さ"といったものも目立つようになってはいないだろうか。そんな疑問や不満を感じることが少なくない。その象徴的な例が、3大会連続となるU-20ワールドカップへの出場権獲得失敗である。
広島ユースは、J1初優勝を果たしたトップチームを支えているだけではない。日本のユース年代のあり方に一石を投じる存在にもなっている。
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