サッカー日本代表の韓国戦勝利に既視感 カタールW杯後に掲げた「指針」は何だったのか (2ページ目)
【「籠城戦」に近い5-4-1】
急造のJリーグ選抜になった代表は、図らずも森保監督のパーソナリティが色濃く出た。韓国のサッカーは強さ、高さ、走力と体力任せで、工夫のない前時代的な攻めだったが、それでも押し込まれている。日本の選手たちは人海戦術で守るが、ボールをつなげることができなかった。そのうち守り疲れ、足も動かなくなり、韓国と競うように長身選手を投入して、最後はどうにか耐えしのいだ。
E-1選手権は、選手以上に森保監督の采配が試されていた。しかし先制のあと、日本は攻撃をまともに組み立てられなかった。キックやコントロール精度が低い選手が多かった韓国が何度もボールを失っていたにもかかわらず、だ。森保監督の3バックはボールを持ち上がる場面もほぼなく、プレスを恐れて前に蹴り込み、簡単に回収されていた。中盤、シャドーの選手が顔を出し、パスを受け、リズムを作る回数も少なかった。
また、ウイングバックの望月ヘンリー海輝は高さ、スピードが森保監督の好みなのだろうが、技術的に劣り、組み立ての出口になっていない。高い位置で仕事をした相馬も、守備は献身的だったものの後手に回っていた。必然的に、後半は凡庸な5バックになっていた。ふたりのウイングバックは背後を取られ、左右からピンチを作られてしまい、3バックの両端との間は明確な弱点だった。
森保監督はワールドカップアジア最終予選で用いた3-4-2-1のシステムに自信を得たようだが、互角以上の相手には"籠城戦"に近い5-4-1になってしまう。そのウイングバックに、三笘薫、中村敬斗、堂安律というプレミアリーグ、リーグアン、ブンデスリーガと主要リーグで二桁得点を挙げたアタッカーを起用するのは宝の持ち腐れでしかない。自ら攻撃的な姿勢を封じているようなものだ。
韓国戦でも、森保監督は3-4-2-1を用いるJリーグのサンフレッチェ広島、柏レイソル、FC町田ゼルビアの選手を中心にチームを組んでいる。その点、彼らしい人材が集まったのだろう。監督のパーソナリティが選手のキャラと同期していたのが3連勝の理由と言える。
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