サッカー日本代表、「超攻撃的」から一変 堂安律、三笘薫の守備での健闘は宝の持ち腐れ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 10月10日、2026年W杯アジア3次予選、日本は敵地でサウジアラビアを0-2で順当に下している。予選は中国戦、バーレーン戦に続きこれで3連勝。アジアを舞台にした戦いでは、今や欧州の有力クラブに多くの選手が在籍する日本の優位が濃厚に出ている。

 アジアでは力の差を見せているが、森保一監督が率いる日本の目標はあくまで「W杯ベスト8」だ。

 強豪との一戦を仮想した場合、W杯常連と言えるサウジアラビア戦では暗い不安もよぎった――。

 森保監督自身が、最終予選進出を決めてから採用している3-4-2-1を本心ではどう捉えているのか、正直な話、わからない。「有力な左サイドバックがいない」という現実のなかでの選択だったとも言えるが、周りは、「攻撃的なフォーメーション」と捉えてきたし、一部選手も「攻撃的な布陣」としてトライしている。実際、中国戦とバーレーン戦では12得点無失点で、多くの選手がゴール近くでプレーし、攻撃色は強くなっていた。だが......。

 サウジアラビア戦では、日本が攻める機会は過去の2試合と比べて激減した。敵地だったのを差し引いても、攻撃はカウンター、もしくは個人の力に頼るものが多かった。3-4-2-1というよりも5-4-1に近く、守備的な性格が濃く出た。

サウジアラビアのアタッカーと激しく競り合う堂安律 photo by Kyodo newsサウジアラビアのアタッカーと激しく競り合う堂安律 photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る ひとつは、久保建英が不在の影響が出たか。先制点を決めた鎌田大地が悪かったわけではない。だが彼は前線から下がるよりも、ボランチに近い位置でプレーメイクに関わりながら前に出ていくべき選手ではないか。一方、久保はうまくサイドや中盤に落ち、同じ左利きの堂安律との相性もよく、ラストプレーにも強さを見せ、攻撃を活性化できる。

 サウジアラビアは平凡な選手が多いが、世界一の金満リーグでスター選手を相手にするのに慣れているようだった。何より、フィジカル的な能力は高い。19番のサレム・アルダウサリのような個も擁し、ポゼッションで上回ってきた。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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