サッカー日本代表は誰が監督でも予選突破は確実 史上最強なのに面白く見えない理由 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 三笘の場合、相手監督が采配でそうし向けたのではない。森保監督の作戦が「引いて構えろ」だったのだ。日本のストロングポイントと言っても過言ではない三笘のドリブル力をどう活かすか。監督に問われる一番の命題であるにもかかわらず、森保監督はウイングバックという、ウイングに比べて平均20メートル程度低いポジションに、三笘を押しとどめようとする。

「サイドを制するものは試合を制す」という近代サッカーの格言からも逸脱した、後ろで守ろうとする、旧態依然とした恥も外聞もない作戦だ。

 しかし、終わってみればスコアは5-0だった。理屈を超えた大勝劇。選手個人の力が作戦ミスを完全にカモフラージュした格好だ。こうなると監督采配の良し悪しなどは、どうでもいい問題になる。森保監督の是非を論じる気は萎える。

 欧州組を20数人揃えれば、アジア予選は誰が監督でも絶対に突破する。誰が監督でも更迭の危機が訪れることはない。1度就任すれば4年間、サッカー以外の問題でも起こさない限り、続投となる。無力感を覚えずにはいられない。日本人選手のレベルは上がる一方だが、本場欧州で武者修行しようとする監督、指導者は稀だ。この傾向が続く限り、彼らのレベルは向上しない。

 4年間安泰という構図は、外国人監督を招いた場合も変わらない。サッカーの中身について議論することが、あまりの戦力差の前に、すっかり無意味になってしまった。W杯本大会のみを例外とする常勝軍団ニッポン。その現実を筆者は看過することができない。日本代表を取り巻く世界が、史上最強であるにもかかわらず、面白く見えないのである。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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