サッカー日本代表の攻撃的3バックシステムが猛威 10月のサウジアラビア戦、オーストラリア戦はどうなる? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【前半、相手の裏を狙った日本】

 もうひとつ中国と違っていたのは、バーレーンがボール奪取後のカウンターまで準備していたことだった。2月に就任したバーレーンのドラガン・タライッチ監督は、テクニックと推進力を兼備する7番をカウンターの起点に設定した。

 日本にとっては、前線5人が相手の5バックとマッチアップする状態だったため、縦パスのルートを見つけにくいうえ、7番の存在によってカウンターを警戒せざるを得ない。そのため、ボランチやセンターバック(CB)からリスキーな縦パスを打ち込めず、攻撃のテンポを上げられない現象が起きていた。

 7番の存在以外にも、もうひとつバーレーンはカウンタールートを用意していた。それは板倉滉の右脇のスペースで、つまり堂安の背後を狙う左の8番にロングボールを配給することで、日本陣内深くに進入するルートだ。その結果、三笘薫と堂安は、中国戦と比べて攻撃に集中できない状況になっていた。

 ちなみに、その狙いが垣間見えたシーンは、前半に4度あった。15分は右CBの16番のロングパスの精度が低く未遂に終わり、21分には堂安のヘッドをかすめて大外の8番にボールがわたるも、これはオフサイド。25分のカウンターシーンでは右サイドで7番がドリブルで日本のプレスをはがしてから左に展開。ただ、これもオフサイドになった。

 アディショナルタイムにも、16番が堂安の背後にロングフィードを供給しており、結果的に堂安と競り合った8番にボールが当たってゴールキックとなったが、攻撃面で明確な狙いが見て取れたという点で、中国戦とは様相の異なる前半になったことは間違いなかった。

 逆に、日本の攻撃の狙いも中国戦とは異なっていた。自陣深くに引いて守った中国と違って、バーレーンはDFラインを高めに設定。縦のコンパクトさをキープすることで日本の攻撃に対抗しようとした。そのため、それを分析したと思われる日本は、前半からDFラインの背後を盛んに狙った。その術を熟知する南野拓実を右シャドーに配置したのも、おそらくその狙いがあったからだろう。

 それを裏付けるかのように、中国戦ではわずか1本だった守田の1試合におけるロングパスの本数が、この試合では13本を記録し、板倉も1本から4本、遠藤も2本から4本に増加。1試合トータルでも中国戦の25本からバーレーン戦では39本に増えている。

 いずれにしても、前半は相手のハンドで得たPKを上田綺世が決めて先制したものの、日本の決定機は三笘のクロスに堂安が合わせた開始9分のシーンのみ。さらにクロス5本、縦パス5本と、どちらも中国戦を下回るスタッツで、前半から日本が圧倒的な攻撃を見せたわけではなかった。

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