「ザイオンの穴」を埋める新守護神・小久保玲央ブライアンこそ、パリ五輪グループステージ突破のキーマンだ (2ページ目)
【まるで少年漫画のようなチームスピリット】
攻め込まれながらも失点を1に抑えたことに、小久保は手応えを感じつつ課題も口にした。
「ラカゼット選手やそういう選手が(ゴール前に)降りてきた時に、そのまま(マークを)引き連れちゃうと相手の中盤の選手が背後を狙っているので、そこのケアをもっと自分がコーチングしなければ。任せるだったり、行ききるだったり、誰かがカバーに入るっていうところを、初戦まで残り少ないですけど、合わせていかなきゃいけないなって思っています」
五輪本番もスタメンGKは小久保に決まりだろう。だが、かといって小久保自身には、意外なほど気負いがない。
「このチームにとっていつでも力になりたいなと思っているので、それはベンチに座っていても変わらないです。でも、一番手で出られるならうれしいので、勝つことを最優先に、自分が少しでも力を添えられればと思います」
キーパーという1試合にひとりしか出場できず、しかもほとんどの場合、大会中にそれが変わることはないポジション。だが、「俺が絶対に試合に出る!」という気持ちは、ここにくると薄れるのだという。
「15〜16歳で代表に呼ばれ始めた時は、やっぱり『自分が!』じゃないですけどアピールしていこうって気持ちでした。だけど、この代表のこの雰囲気で、そんなことは言えない。正キーパーという自覚より、なにより出たら『俺、やりますよ!』っていう気持ちに心の底から思えるんです。もう、それは本当に嘘なしで。
シント・トロイデンだったら、正キーパーとしてしっかり自分の存在を出さなきゃいけないって思うかもしれないですけど、ここではそんなのを出したくないし、出す気にならない」
だからこそ、U23アジアカップでは優勝という結果を出せたし、五輪でもみんなで頂点を目指そうという一体感があると強調する。
「チームはすごい雰囲気がよくて、U23アジアカップ(五輪予選)ではそれが結果になった。全員で勝って優勝しようっていうチームに近づいているなと思います」
まるで少年漫画のようなチームスピリットを、小久保は熱く語った。この日のフランス戦で対峙したラカゼットやマテタのような圧倒的なオーバーエイジの個の力はなくても、彼らは本気で頂きを目指している。
著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。
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