日本代表が抱えるジレンマ 強くなったがゆえに世界で勝つための発想の転換が必要になってきた (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 しかも、2次予選の途中となる今年1月にはアジアカップも行なわれており、今季は特に肉体的な負担が大きいシーズンだった。

 だからこそ、2次予選6試合のなかでは、時にヨーロッパ組の多くを呼ばない試合があってもよかったはずだが、そんな配慮は見られなかった。

 常に"顔役"をそろえたいという考えのなかには、おそらくサッカー人気に対する危機感も相当にあるのだろう。というのも、日本代表戦、それもワールドカップ予選でありながら、地上波での中継はおろか、ネット配信すら行なわれない試合が出てきているからだ。

 代表戦は地上波で放送してほしいし、スタジアムも満員のサポーターで埋めたいと考える日本サッカー協会が、ヨーロッパ組の招集にこだわるのは当然とも言えるだろう。

 たとえ6試合のなかの1、2試合であろうと、冨安も三笘も久保建英も呼ばれておらず、メンバーの大半が初招集のJリーグ組。そんな日本代表に興味を持ってもらおうというのは、よほどのサッカー通に対して、でなければ無理があるからだ。

 日本代表の選手たちがヨーロッパのクラブで活躍すればするほど、ふだん彼らのプレーを生では見られない日本のファンは、"凱旋帰国"を心待ちにする。

 だがその一方で、毎回それをやり続ければ、選手たちの肉体的負担は増大し、むしろ個の強化という観点に立てば、逆効果にさえなりかねない。

 あちらを立てれば、こちらが立たず――。日本代表は今、強くなったがゆえのジレンマを抱えているのではないだろうか。

 同じことは、来月に開幕を控えたパリ五輪に出場するU-23日本代表にも言える。

 かつて日本代表の強化において五輪が重要視されたのは、日本という極東の島国にとって、それが世界と真剣勝負を繰り広げられる数少ない機会だったからである。

 しかし、時代は変わり、現在は20歳前後の選手でも海を渡るケースが珍しくない。つまり、彼らは日常的に世界に触れることができているということ。言い換えれば、昔ほど五輪が貴重な舞台ではなくなっているということである。

 アジア最終予選を兼ねたU23アジアカップやパリ五輪本番で、一部のヨーロッパ組を招集できない事態に陥ったことを悲観的に見る向きも少なくなかったが、日本代表の強化を第一に考えるなら、そういう選手が出てきたことをむしろ喜ぶべきなのかもしれない。

 もちろん、五輪に出られるなら出たほうがいいし、メダルが獲れるならそれに越したことはない。なんといっても、日本は世界屈指と言っていいほどに、五輪への注目度が高い国なのである。メダル獲得となれば相当な注目を集めるはずだし、人気アップにもつながるはずである。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る