「みんな圭佑にボールを集めていた」豊田陽平が代表に定着できなかった理由【2020年度人気記事】

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

2020年度下半期(20年10月?21年3月)にて、スポルティーバで反響の大きかった人気記事を再公開します(1月27日配信)。

北京五輪で日本唯一の得点を決め、日本代表では8試合に出場している豊田陽平(サガン鳥栖)北京五輪で日本唯一の得点を決め、日本代表では8試合に出場している豊田陽平(サガン鳥栖)連載:日本代表という肩書に迫る(2) (1)を読む>>

 代表チームは、世界を敵に回して勝利するため、戦い方を確立させようとする。プレースタイルとも言い換えられる。スタイルに沿った選手選考になるのは、必然だろう。

 逆説的に言えば、漏れた選手は「タイプじゃない」と切り捨てられる。

 スペイン人ストライカー、アリツ・アドゥリスはそのキャリアの中でコンスタントにゴールを記録していたが、代表とは縁遠かった。

 同年代に活躍したスペイン代表には、ダビド・ビジャ、フェルナンド・トーレスという"不可侵"のゴールゲッターがいた。中盤にはボールプレーヤーが多く、「ティキタカ」と称された美しいパスサッカーを志向。センターフォワードを使わず、ゼロトップの採用もしばしばだった。

 アドゥリスはマジョルカ、バレンシア、アスレティック・ビルバオなど所属したクラブで、絶対的な空中戦の強さを誇っていた。クロスボールを呼び込み、ゴールに放り込む。長いボールを蹴り込むチームで、ストライカーとして輝いていた。相手ディフェンスを挑発する駆け引きも含めて、実に泥臭いスタイルだ。

「代表ではプレースタイルが合わない」

 アドゥリスはそう言われていたが、2015-16シーズン、35歳でリーガ・エスパニョーラ20得点を記録し、2010年以来となる2度目の招集を受けている。EURO2016に出場し、ゴールも記録した。ただ、チームは勝ち上がれなかった――。

 サガン鳥栖で11シーズン目となるFW豊田陽平は、クロスボールをゴールに叩き込み続けてきた。J1通算98得点は、堂々たる数字だ。

 2011年シーズン、J2で得点王になってチームを昇格させて以来、ゴールゲッターとして道を切り開いてきた。2012年から4シーズン連続で15得点以上と、三浦知良の偉大な記録に並んでいる。単独最多記録となる5シーズン連続は13得点で惜しくも逃したが、ストライカーとしての経歴は出色だ。

 しかし、代表では2013年の東アジア選手権でデビューを飾ったものの、8試合しか出場はない。それも、ほとんどが終盤の交代出場。先発は初陣のオーストラリア戦のみだ。

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