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「イケるやん」稲本潤一はロシアW杯を見て
1999年の快挙を思い出した (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

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 稲本は、JFA(日本サッカー協会)のB級コーチ指導者講習を受けた際、驚いたことがあったという。

「自分らが小さい時は、走るのが遅いだけでも叩かれたりした。それって、理不尽だし、普通にあかんことだけど、そういうところから人間の図太さって磨かれていくと思うんですよ。

 でも今は、B級の指導者講習などに参加すると、やたらと選手を褒めるんです。(選手が)わからんかったら、丁寧に教えてあげなあかん。選手に対して『なんでそこまで気を使って、そんなに気持ちよくさせてあげなあかんの』って感じなんです。昔は、できない選手は『自分で考えろ』っていうのが普通やったし、そこで考えることで成長できるんやけどね......」

 今の時代、鉄拳指導は許されない。言葉で選手を盛り立てて指導する。ただそれでは、厳しい世界で戦っていくために必要なメンタルを、十分に鍛えることができない。稲本なら、自らが子どもの頃に受けてきた指導を、今風にどうアレンジしていくのか――。稲本が指導者になる姿も、早く見てみたい気がする。

 ナイジェリアで一緒に戦った面々は、すでに何人か指導者となった。ちなみに、稲本と同じく"控え組"だった氏家英行は昨年度、Jクラブの監督が務めることができるS級ライセンスの講習を受けて合格。今年中には、同ライセンスを取得できる予定だ。

 同様に、昨年は小笠原満男が現役引退。指導者の道を歩むことになった。同世代でプレーしている選手が徐々に減ってきている。

 今年、40歳を迎えるので、それは自然の摂理でもあるが、逆にこの年齢になってもJリーグでプレーできるのは、「黄金世代」だからこそ、でもある。

 稲本は昨年、わずかな出場機会しか得られず、北海道コンサドーレ札幌との契約が満了となった。2018年シーズン、Jリーグの出場は2試合。年齢的なものもある。「引退」という声も囁かれたが、稲本は「そんな気は微塵もなかった」と言う。

「B級(ライセンス)を取りにいって、指導者としては、自分が言うことを選手が聞いてくれて、うまくいった時とかの面白さはあるけど、選手としてピッチに立って、サッカーをする充実感とかの楽しさには、まだまだ勝てないですね。

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